小さい頃、なにかあると小指をからませて(くち)にしていた。

『やくそく』

 でも、あの日した約束は一世一代(いっせいちだい)だった。
 たぶん、あいつはきっと忘れてしまっているだろう。

『れいっ!』

 オレより小さくて、知らない人がいるとすぐオレの後ろに隠れた。
 人としゃべるの苦手で、1人でぽつんと立っていることが多かった。

『オレがまもってやる!』

 名前を呼ぶと振り返って、オレを見ると花みたいに笑う。
 色素が薄い髪が風になびいて、ふわふわと揺れる。その姿はまるで童話の中に出てくるお姫様みたいで、あの時のオレは子供ながらに、この約束だけは絶対守ると心の中で誓っていたんだ。


ーーーなのに


「こー。起きて、遅刻するよ」
「ぐげぇ」

 突然やってきた重力を全身に感じて、まぶたを開ければ、目の前には記憶とかなり変わってしまった幼馴染の玲がいる。
 そう、あの頃、(はかな)美少女(・・・)だった幼馴染はいまや高校1年男子の平均身長オーバーの175cm。高身長かつ好青年なイケメンくんに進化してしまった。

「なに、ぼーっとしてるの? 本当に遅刻するよ?」

 いまの姿で残っている面影は色素の薄い、すこしクセのある髪だけである。

「うるせぇ」