砂漠の王者と呼ばれるジャハル帝国で、後宮に新たな寵姫が迎えられる。
その情報はまたたくまに諸国を飛び交って、旅芸人や商人は一斉にジャハル帝国の都を目指した。
現皇帝のハレムは栄えあるジャハル帝国の後宮としては小さかったが、皇族出身のアナベル皇后が絶対勝者として君臨していた。
ところが皇后が病の静養のためにハレムを離れるということで、色気づいた諸侯たちも娘の後宮入りに動き出した。
ソフィアは部下たちに命じて後宮入りに名を挙げた娘たちのリストを作らせると、それを見て憤慨していた。
「けしからぬ者どもだ」
「どれどれ?」
横から覗き込んだのは、一緒にアナベル皇后にお仕えしてきた侍女ナンナだった。くるくると巻いた栗毛をしていて、小柄さも相まって子猫じみた少女だった。
ソフィアは青白い顔に熱い目を光らせて言う。
「寵姫の選定は、皇后様のご厚意というのを知らぬのか」
「そりゃ知らないでしょうよ。皇后様が恋をしたから後宮に寵姫を入れるなんて」
ナンナはやれやれと肩をすくめると、同僚にもっともな忠告をする。
「で、あなたは後宮に残ってこの祭典を見届けるよう言われたのでしょう?」
「皇后様のご意思だ。新しい主には誠心誠意お仕えする。だが皇后様にお仕えした日々が消えるわけではない」
「堅物よねぇ、あなたって」
ナンナは呆れたようにぼやいたが、気安くソフィアの肩を叩いて笑う。
「ま、私は皇后様についていくけど。幸運を祈るわ」
「うむ。世話になった。今までありがとう」
ソフィアは無骨に礼を言うと、ナンナはむずかゆそうにそっぽを向いた。
ナンナはソフィアを見て、ひとりごとのようにつぶやく。
「……悔しいけど、あなたの新しい主って大体想像つくの」
「ナンナ?」
ソフィアは不思議そうにナンナを見たが、ナンナは首を横に振ってにこりと笑う。
「さて、新しい主探しのその前に。皇后様に、ちょっとだけあなたの手助けをするように命じられてるの」
ナンナは喉を鳴らして、顔の前で手を組む。
「この衣装担当に任せて。ドレスに首飾り、宝石に香水。ふふ、腕が鳴るわ……」
ナンナは喉を鳴らして、楽しい想像をするように目を細めた。
その情報はまたたくまに諸国を飛び交って、旅芸人や商人は一斉にジャハル帝国の都を目指した。
現皇帝のハレムは栄えあるジャハル帝国の後宮としては小さかったが、皇族出身のアナベル皇后が絶対勝者として君臨していた。
ところが皇后が病の静養のためにハレムを離れるということで、色気づいた諸侯たちも娘の後宮入りに動き出した。
ソフィアは部下たちに命じて後宮入りに名を挙げた娘たちのリストを作らせると、それを見て憤慨していた。
「けしからぬ者どもだ」
「どれどれ?」
横から覗き込んだのは、一緒にアナベル皇后にお仕えしてきた侍女ナンナだった。くるくると巻いた栗毛をしていて、小柄さも相まって子猫じみた少女だった。
ソフィアは青白い顔に熱い目を光らせて言う。
「寵姫の選定は、皇后様のご厚意というのを知らぬのか」
「そりゃ知らないでしょうよ。皇后様が恋をしたから後宮に寵姫を入れるなんて」
ナンナはやれやれと肩をすくめると、同僚にもっともな忠告をする。
「で、あなたは後宮に残ってこの祭典を見届けるよう言われたのでしょう?」
「皇后様のご意思だ。新しい主には誠心誠意お仕えする。だが皇后様にお仕えした日々が消えるわけではない」
「堅物よねぇ、あなたって」
ナンナは呆れたようにぼやいたが、気安くソフィアの肩を叩いて笑う。
「ま、私は皇后様についていくけど。幸運を祈るわ」
「うむ。世話になった。今までありがとう」
ソフィアは無骨に礼を言うと、ナンナはむずかゆそうにそっぽを向いた。
ナンナはソフィアを見て、ひとりごとのようにつぶやく。
「……悔しいけど、あなたの新しい主って大体想像つくの」
「ナンナ?」
ソフィアは不思議そうにナンナを見たが、ナンナは首を横に振ってにこりと笑う。
「さて、新しい主探しのその前に。皇后様に、ちょっとだけあなたの手助けをするように命じられてるの」
ナンナは喉を鳴らして、顔の前で手を組む。
「この衣装担当に任せて。ドレスに首飾り、宝石に香水。ふふ、腕が鳴るわ……」
ナンナは喉を鳴らして、楽しい想像をするように目を細めた。