「前に進むのって、ちょっとしたきっかけなんだね」
 私が言うと、友人の二人が呆れた顔を浮かべた。
「今さら何を言ってるんだ?」
「本当ね。まぁ、だから桃なんだろうけど」
 ついに猫の同人誌が完成した。
 前半に漫画、後半は写真集という構成。漫画は私が撮った写真をベースに、コマ割り、台詞を記載していった。
「よくできてるじゃん。里央が手伝ったんだろ?」
「そう……追い込みが酷かったわぁ……」
「えー、それなら、私だって里央の手伝ったじゃん」
「あぁ、あれはすごいな。桃の意見でかなり良くなったんじゃないか? ちゃんとアニメになっていた」
「でしょ!? さっすが、ささら。話が分かるぅ!」
「ささらだって、新しいコンセプトにしたら客層が増えたくせに……あれだけ嫌がってたくせにぃ……」
「う……まぁ、もともと、可愛いのは、好きだったし……」
 私たちは何だかんだで前に進んでいた。
 悶々と一人でいた時よりも活発化し、何にだってなれる気がしていた。
 この感覚は、もっと若い時、青春を謳歌していた学生の時のようだ。あの頃だって、未来は何にだってなれる気がしていた。
「それにしても……一回目で当選するとはな」
「悪運が強いのよね……昔からそうじゃない?」
「あ、良いこと考えたよ、里央。うちらでサークル作って一緒に出そうよ」
「え? 何を?」
「アニメに決まってんじゃん。まだ完成しないと思うから、後日公開みたいな感じでプロモしようよ」
「えぇ……でも、あぁ、良いかも?」
「でしょでしょ! ささらは事務所あるからそういうのできないけど……でも、そのうち何かできると良いな」
「……ふふ、ああ。そうだな……でも、なんか楽しいな。こういうの」
「まぁねぇ……桃に振り回されたけど……こういう過ごし方って、昔と変わらないね」
「あの時は、曖昧な未来ばっかり語ってたな……」
 ささらが遠い目をして呟いた。
「でも、自分らしく生きるって気持ち良いね。もっと早く行動すれば良かった」
 思わず言うと、ささらと里央は苦笑する。
「そう思う瞬間は、誰もが訪れると思うぞ、人によって大小は違うと思うが」
「そうそう。これから人生を楽しめば良いんじゃない」
 人生を楽しむ、ね。
 問題はそのやり方だったんだろうな。現状に甘えて、何も考えなかっただけ。いろいろなやり方があったはずなのに、無視して周りに流されていた。
 だけど、それが急に我に返る。
「よし! じゃあ、里央のアニメプロモ作ろう!」
 そう宣言すると、嫌そうな声で輝く返事が返ってきた。