今日は体育祭実行委員のミーティングがあるらしくて、藍には先に帰ってても良いよ、だなんて言われていた。
けれど、藍に会いたい気持ちが抑えられなかったから、あたしは結局、こうやって真昼と時間を潰している。
日菜は例の社会人の彼とデートだから、といってすぐに帰ってしまったが、真昼は、うちのクラスの実行委員である陽世を待つついでに、とか言って付き合ってくれている。
お互いにSNSをチェックして、彼氏のことだとか、友達のことだとか、行事のことだとか、そういうとりとめのない会話を一周分終えて、ふたりとも流石に待ちくたびれてしまって、「もう帰っちゃう?」とか、そういうおふざけが出てくる頃合い。
ごめん遅くなったー! と高らかな声をあげた陽世が教室に戻ってきた。
真昼が姿勢を正して、陽世に声をかける。
「お疲れー」
「いやあ、なんか2年と揉めて大変だったよー」
揉めるって何が? と尋ねると、陽世はこっちを向いて顔をしかめながら続ける。
「誘導係の割り振り? をどうするかでぶつかったみたい。あたしは競技係で関係なかったのに、全体の問題だからっていって中々帰らせてもらえなくてさー」
まじ最悪だよね、と陽世が文句を言う。
陽世が帰ってきた、と言うことは、藍ももうすぐ来る頃合いだろう。私はスマホを触って、一番上にピン留めしてある藍のトークルームを開く。
「藍も終わってるんだよね?」
「うん、もうすぐ来ると思うよ。てか紬乃ずっと待ってたの?」
「そうだよー、健気でしょう?」
目の前にいる陽世に対して軽口を叩きながらも、あたしは手早く、教室にいる、と藍にメッセージを送った。