スマホを持つ手に力がこもって、かすかに指が震え出す。

 彼の発言に思考が追いついていなくって、それでも、最悪なことが起きているってことはわかっていて。



「千歳くん、どういうことなの」

『自分で考えてみなよ』

「訳がわからないの。あたしも、藍も関わってるって、どういうこと?」



 答えを求めて必死に言葉を紡いでいくあたしがおもしろいのか、彼はずっと、くすくすと笑っている。


 そしてそのうち、スピーカーの向こう側から音が消えて、その数秒後、彼がすこしだけ低い声で、やわらかく言った。




『成田、ストーキングを受けてたらしいね。あれ、もう止まったんじゃあ、ないかなあ』




 背筋が、ぞっとする感覚がした。

 予想だにしない言葉に眩暈がして、あたしはその場に座り込んだ。


 藍のストーキングは、確かに最近減ってはいたけれど、完全になくなったわけじゃなかったはず。



 でも、今日はどうだっただろうか。
 確かめてみないとわからない。



 それに、彼の言葉を裏をかくと、また新たが事実が浮き彫りになってくる。




 藍が誰かにストーキングを受けていた。

 坂下ちゃんが行方不明になった。

 藍のストーキングが止まった。

 そしてそれを、千歳色は知っていた。




 少しずつ、パズルのピースがはめ込まれていって、それぞれ独立して浮いていた点と点が、あざやかに結ばれていく。


 藍のストーカーは、坂下ちゃんで、千歳色は、坂下ちゃんの行方不明という件に、確実に関わっている。


 そんな思考の繋がりが生まれて、信じたくはないのに、それでもやっぱり、それ以外の可能性なんて考えられなかった。


 そして千歳色に、藍のストーカーをどうにかしてほしいって頼んだのは、あたしだ。