「連絡先、消すね。千歳くん、なんかしつこいし怖いんだよね」

「……うん。そうして」



 不安げにこちらを覗き込む藍が見るに堪えなくて、あたしは藍の目の前で、千歳色の連絡先をブロックした。

 トークの中身を見られるのは避けたいから、とりあえず連絡先だけ消して、ついでにスマホの通知もオフにしてから、スマホを向こうに放り投げた。

 藍はもう一度、あたしに向き直る。



「ごめん。紬乃が千歳と話してんの、心配になって」

「いいの。あたしの方こそ、ごめんね」



 珍しく藍が嫉妬のような感情を露わにしたので、少しだけ、心が満たされていくのを感じた。

 もう一度、ベッドの上であたしのシャツをはだけさせた藍が、胸元にキスを落とす。


 あたしの鎖骨の下をなぞって、この辺りなら平気? と尋ねてきたので、

 その言葉の意味をきちんと理解しているあたしは、平気、と言った。


 鈍さと鋭さを両方兼ね備えた、痛みと違和感の間みたいな感覚が肌を突き刺して、藍の唇が離れてからそこを見ると、白い肌に彩られた赤が咲いている。


 藍、普段はあまりキスマークとか、付けないのに。


 余裕がなくなって必死にあたしを求めてくる藍が愛おしくて、私は彼の髪の毛にキスをした。



 最中、彼と愛を囁き合いながら、あたしたちは肌を触れ合わせたけれど、頭の中は、千歳色が放つ毒性に少しずつ侵食され始めていたのか、ずっと、自分と藍と、それから千歳色とのこれからを想像しては、不安ごと抱いて、シーツに深く沈んだ。