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成田藍は所謂あたし、織方紬乃の彼氏で、同じ学校に通う同級生でもある。
あたしが彼を好きな理由は、あげ始めたらキリはないけれど、ひとことで表すなら、誰よりもきらきらと輝いているから、というところだろうか。
もう引退してしまったけれど、バスケ部のレギュラーで、眉目秀麗、背も高くて、おまけに社交的で賢いとくる。
そんな、スクールカーストで言ったら間違いなく頂点に位置する彼に憧れない女子はほとんどいない、というわけで。
そんな藍の彼女の座にいるのは、このあたしだ。
あたしが藍の彼女になったのは、まあ、言ってしまえば単純な話で、あたしが藍の彼女として相応しいから、というか、藍の彼女として相応しい努力をしてきたから、ということにしておこうと思う。
購買で買ったカフェオレをごくり、と飲み込みながら、目の前で繰り広げられている会話に耳を傾けた。
「それでさ、今度の日曜日車で遠くに遊びに行こうって言われて」
「いいなあ、日菜の彼氏。車持ちだもんね」
真昼、日菜、陽世、そしてあたしからなる4人グループは、このクラスでは中心に位置しているといっても過言じゃない。
4人とも、ある程度整った容姿をしていて、派手で、お洒落とか化粧に興味があって、そしてほとんどの割合で彼氏がいる。
そんなお互いに無意識のうちに惹かれあって、グループをつくったあたしたちは、毎日昼休みとか、放課後だとかに、薄っぺらい会話を繰り返す。
そんなグループに所属しているあたしは、自分の容姿が他の人のそれよりも優っていることなんて、まあ、自覚しているし、というかみんなにとっても周知の事実、だろうし。
スカートの丈も、髪型も、化粧も、全部最大限にあたしに似合うような模範解答を選んでいるつもりで、他の3人だって多分そう。きっと3人とも、人生における正解の選択肢を、自然に選び続けてきた人種だろうと思う。