頭の中からベッドに溢れ出るどす黒い影は、藍のとなりを歩いていた森田への負の感情で、それは嫉妬とかいうわかりやすいものじゃなくて、憎悪、とか、嫌悪、とか、そういった強い負の情動をすべて内包した何かだった。


 これまで、割と自分の望むものを手に入れてきた人生だったと思うし、そりゃあ、みんなから羨ましがられる藍と付き合えることを誇らしく思ってはいるけれど、だからといって、むやみやたらに他の子から言い寄られる藍を見て、不安にならない、といえば嘘になる。



「藍は、あたしのこと、好き?」



 あたしの質問に、藍は動きをとめる。

 繋がった状態のまま、藍は冷静にあたしの顔をじっくりと眺めて、



「俺は、紬乃しか好きじゃないよ」



といって、思いきりあたしを抱きしめた。

 それと同時に、藍が思いきりそれを突き上げるものだから、ぅあ、だなんて動物めいた声が漏れ、それを認識した藍が、より激しくあたしを抱いた。


 藍の言葉が嬉しくて、藍から与えられる甘美な刺激に溺れてしまいそうで。だけどやっぱり、あたしの思考に落ちた黒い影は、簡単になくなるわけではなくって。けれど目の前にいる藍を、信じたい気持ちは確かにあって。

 そんな感情だとか、思考だとか、はたまた2人の呼吸だとかがみだらに入り乱れるこの空間で、あたしは藍を求めていたし、藍も、あたしを求めているように感じられた。