あたしから手を繋がれたのがよっぽど嬉しかったのか、藍はいつもより機嫌が良かった。そのうえ藍が、「紬乃の家に行きたい」だなんて言うものだから、ノーと言えるわけもなく、あたしはほんの少しの恥ずかしさを抱きかかえながら、藍を自分の部屋に上げた。


 飲み物出そうか? と藍に聞くと彼は、大丈夫、と遠慮して、そしてすぐ、座ったままあたしをやさしく抱き寄せた。


 藍は、家で一緒にいるときは常に、あたしにぴったりとくっついてくる。そんなところは、格好いい、ではなく、可愛い、を感じる要素になっていたりする。


 けれど、その手が性欲を孕んで、あたしを荒々しく、それでも優しく掻き抱くとき、彼に所謂男らしさというものを感じてしまう。

 可愛らしさと男らしさのギャップが、いとしい、だなんて感情をつくって、そしてあたしは、その感情に呑まれて、溺れて、死んでしまいそうになる。


 今日は、森田の件もあって少しだけ不安な気持ちになってしまっていたから、珍しくあたしから藍に身体を寄せた。

 藍は、どうしたの? といってあたしの頭を撫でて、そっと髪の毛にキスをする。

 本当は、髪の毛にも神経細胞があるんじゃないか、ってくらいに、藍からのキスはあたしを奮い立たせる。


 そしてそのキスが、髪の毛から、耳に落とされ、そして唇に降りてくる。

 藍からのキスの感触とともに目を瞑ると、彼の熱が一気にあたしの中に流れ込んできて、行き場もなく彷徨っていた右手が、藍から捕えられて、すぐに何も考えられなくなった。