「ああ、美味しかったー!」

アイスを食べ終わって、店を出た。隣を見ると、のぞみが頬を押さえてニヤニヤしている。

「なにニヤついてんの?」
「ニ、ニヤついてなんかいないよ! アイスの余韻に浸ってただけ」
「本当か? 俺にはそうは見えないけど」
「う、そんなこと……」

のぞみの言葉がそこで止まる。それは肯定を表すのだろう。

「……冬くんと遊べて嬉しかったなって思ってただけだもん」

ボソッと言った彼女の声は、幸か不幸か俺の耳まで届いていた。驚いて顔を見ると、ほんのりと頬が赤らんでいる。珍しく照れているらしい。

「へぇ、そっかそっか。それは良かった」

のぞみが照れているからか俺の方は少し余裕が出来て、仕返しと言わんばかりに意地の悪い言い方をした。のぞみは上目遣いで睨んでくる。

「冬くんだってニヤニヤしてるし! 気持ち悪い!」
「きもっ!? 俺だってニヤニヤくらいするわ!」
「開き直んないでよ!」
「開き直ってねーよ!」

そこまで言ってから、俺たちは同時に噴き出した。

夕方の街に二人の笑い声が響く。それはそのまま美しい夕焼けの空に吸い込まれていった。