正直言って、俺は生きることにそこまで執着していない。生きる意味も、生きる喜びも、何も分からないからだ。
だからといって、死ぬ意味も見つけられない。惰性でだらだらと生き続けているだけだ。

正晴の存在は、俺をこの世に留めている理由のうちの一部ではあるが、その存在だけのために生きようとはどうしても思えない。

正晴のことは大切。
正晴のことは大好き。

でも、だからこそ、もし正晴が離れていってしまったらと思うとゾッとする。

あいつのことを信用しないのではない。ただ、人の心は変わってしまう。それが怖い。そんなことを考えながらの付き合いなんて、虚しくて、寂しい。

だから、どうしても正晴を俺の生きる意味にはできないのだ。


そう思って生きてきてもう何度目かの春、のぞみという女の子と出会った。

自分と似た、生きることに前向きじゃなさそうな女の子。
惹かれないわけがない。

俺はただ傷を舐めてほしかった。俺の気持ちをわかってくれるであろう彼女に。