「じゃあ、俺もうそろそろ帰るね」

正晴が立ち上がって、伸びをしながら言った。俺は驚いて正晴を見上げる。

「え、わざわざ俺が戻ってくるの待ってたの? 待たずに帰っても良かったのに」

もしかしたら、のぞみとどうなったかが気になって待っていたのかもしれない。しかし、もしそうなら、正晴のことだし、直で見ていそうなものだが。

「さあ?」

正晴は意地悪そうに笑うと、一度俺の頭をわしゃっと撫でた。

「まあ、頑張りなね」

そのまま、ヒラヒラと手を振って病室から出ていってしまう。俺は手を振り返しつつも、その応援の意味を考えていた。


正晴が去ってから少し経ち、電池が切れたように、ベッドに寝転がる。

今日一日で色んなことが起こった気がした。
いや、気がしただけではない。実際に起こったのだ。

リハビリや正晴の見舞いは、まあいつものことだが、のぞみとの出会いというのは、俺にとってすごく非日常的なことだった。


自分と似ている女の子との出会い。

それがこれからの俺にどう関係していくのかは分からないが、何か変われるような、そんな予感がしていた。