目覚めてから2日後、正晴がまた病室に来ていた。前々から思っていたが、ちょっと来すぎである。学校もバイトもあるのに、そんなに頻繁に来ていたら疲れるだろう。しかも、俺が眠っている冬の間も、そのくらいの頻度で来てくれているという。嬉しいが心配になる。でも、それを言うと怒るだろうから本人には言わない。
「体はどう? まだだるい?」
そう優しい口調で尋ねてくる。俺が首を横に振ると、ほっとしたように微笑んだ。来すぎなことには違いないが、こうして気にかけてくれるのは単純に有難い。
「正晴は学校休みなんだっけ?」
「そう、今日からしばらくは休み」
背負っていたリュックを置きながら、正晴が答えた。入試の都合だかで一週間ほど休みになるらしい。確かに去年もそんなことを言っていた覚えがある。
しばらく話を続けたあと、正晴はリュックから何かを取り出した。話している間もリュックの方をチラチラと見ていたので、何かあるのかと思っていたが、やはり事情があったらしい。
「冬に渡したいものがあるんだけど」
改まった雰囲気に、つい背筋が伸びる。正晴から物をもらうことなんてしょっちゅうで、今更特別なことなんてないはずなのに。
「のぞみちゃんから冬への手紙」
そう言って差し出されたのは、淡い黄色の封筒だった。表には俺の名前が書いてある。丸みを帯びた可愛らしい文字だ。
「なんで」
声が震える。何に対する疑問なのか、自分でも分からない。多分俺は今、すごく動揺した顔をしていると思う。目覚めてからずっと夢の中にいるような感覚だったのに、手紙という形のあるものが突然現れたからだ。
「のぞみちゃんに頼まれて俺が預かってた。冬が起きたら渡してくれって」
その言葉で、俺が眠っている間に正晴とのぞみが会っていたことを知った。のぞみが自分の死期を悟って、正晴に手紙を託したのだということも。
「本当は退院してからでもいいかと思ったけど、変に先延ばしにするのもよくないと思うから」
しょっちゅう見舞いに来て、体調を心配してくれるようなやつだ。快調ではない状態の俺に、のぞみからの手紙を見せるのは少し心配だったんだろう。ずっと俺の様子を伺うような目をしている。
無言で受け取ると、正晴は手紙から離した手で自分の頭を搔いた。整っていた髪が少し乱れる。俺はといえば、受け取ったはいいものの、どうしてよいのか分からなかった。手紙なんだから読めばいい。当たり前の話だ。だが、すぐに封を開けることはできなかった。
「体はどう? まだだるい?」
そう優しい口調で尋ねてくる。俺が首を横に振ると、ほっとしたように微笑んだ。来すぎなことには違いないが、こうして気にかけてくれるのは単純に有難い。
「正晴は学校休みなんだっけ?」
「そう、今日からしばらくは休み」
背負っていたリュックを置きながら、正晴が答えた。入試の都合だかで一週間ほど休みになるらしい。確かに去年もそんなことを言っていた覚えがある。
しばらく話を続けたあと、正晴はリュックから何かを取り出した。話している間もリュックの方をチラチラと見ていたので、何かあるのかと思っていたが、やはり事情があったらしい。
「冬に渡したいものがあるんだけど」
改まった雰囲気に、つい背筋が伸びる。正晴から物をもらうことなんてしょっちゅうで、今更特別なことなんてないはずなのに。
「のぞみちゃんから冬への手紙」
そう言って差し出されたのは、淡い黄色の封筒だった。表には俺の名前が書いてある。丸みを帯びた可愛らしい文字だ。
「なんで」
声が震える。何に対する疑問なのか、自分でも分からない。多分俺は今、すごく動揺した顔をしていると思う。目覚めてからずっと夢の中にいるような感覚だったのに、手紙という形のあるものが突然現れたからだ。
「のぞみちゃんに頼まれて俺が預かってた。冬が起きたら渡してくれって」
その言葉で、俺が眠っている間に正晴とのぞみが会っていたことを知った。のぞみが自分の死期を悟って、正晴に手紙を託したのだということも。
「本当は退院してからでもいいかと思ったけど、変に先延ばしにするのもよくないと思うから」
しょっちゅう見舞いに来て、体調を心配してくれるようなやつだ。快調ではない状態の俺に、のぞみからの手紙を見せるのは少し心配だったんだろう。ずっと俺の様子を伺うような目をしている。
無言で受け取ると、正晴は手紙から離した手で自分の頭を搔いた。整っていた髪が少し乱れる。俺はといえば、受け取ったはいいものの、どうしてよいのか分からなかった。手紙なんだから読めばいい。当たり前の話だ。だが、すぐに封を開けることはできなかった。