目が覚めた。部屋の明るさ的におそらく夜なのだろう。ここ数年は昼に起きることが多かったから、なんだか少し新鮮な気持ちになる。
病室には母さんと父さんと正晴がいた。母さんはともかく、父さんまでいるとは思わなかった。仕事は大丈夫なんだろうか。ぼーっとする頭でそんなことを考える。
「あ、起きた」
目覚めた俺に最初に気がついたのは正晴だった。その声につられるように、母さんたちもこっちを向く。久々の寝起きで目が霞むが、とりあえずみんな元気そうだ。
まずは主治医の先生を呼ぶのが決まりだった。いろんな数値やらなにやらを確認して、それを両親に説明する。例年通りの流れで今更新鮮味もない。病室に残されているのは正晴と俺だけである。
「珍しく今年は夜だったね、起きたの」
「そうだな。起きたら外が暗いのなんか久々」
なんでもないような会話はすぐに終わり、無言の時間が流れる。のぞみのことを真っ先に聞きたかったが、なんとなく話題に出せなかった。ここにのぞみがいないことが答えである気がしたし、正晴がこんなに静かなのもそれが原因なんだろうと思った。
「ねえ、冬」
「なあ、正晴」
沈黙を破ろうとするタイミングが被った。いつもなら目を見合せて笑うところだが、そういう雰囲気ではない。正晴の顔はかなり暗くて、明らかにいつもと様子が違っていた。俺は目配せをして、先に話すように促した。
「……のぞみちゃん、2月の上旬に亡くなったよ」
「そうか」
言いにくそうに告げられた予想通りの内容に、簡単な返事しかできない。いなくなった実感がないからか、悲しみや寂しさはあまり感じなかった。改めて考えてみれば、去年の今日はまだのぞみと出会ってすらいなかった。だから、彼女がいない目覚めの方が自然なのだ。
病室には母さんと父さんと正晴がいた。母さんはともかく、父さんまでいるとは思わなかった。仕事は大丈夫なんだろうか。ぼーっとする頭でそんなことを考える。
「あ、起きた」
目覚めた俺に最初に気がついたのは正晴だった。その声につられるように、母さんたちもこっちを向く。久々の寝起きで目が霞むが、とりあえずみんな元気そうだ。
まずは主治医の先生を呼ぶのが決まりだった。いろんな数値やらなにやらを確認して、それを両親に説明する。例年通りの流れで今更新鮮味もない。病室に残されているのは正晴と俺だけである。
「珍しく今年は夜だったね、起きたの」
「そうだな。起きたら外が暗いのなんか久々」
なんでもないような会話はすぐに終わり、無言の時間が流れる。のぞみのことを真っ先に聞きたかったが、なんとなく話題に出せなかった。ここにのぞみがいないことが答えである気がしたし、正晴がこんなに静かなのもそれが原因なんだろうと思った。
「ねえ、冬」
「なあ、正晴」
沈黙を破ろうとするタイミングが被った。いつもなら目を見合せて笑うところだが、そういう雰囲気ではない。正晴の顔はかなり暗くて、明らかにいつもと様子が違っていた。俺は目配せをして、先に話すように促した。
「……のぞみちゃん、2月の上旬に亡くなったよ」
「そうか」
言いにくそうに告げられた予想通りの内容に、簡単な返事しかできない。いなくなった実感がないからか、悲しみや寂しさはあまり感じなかった。改めて考えてみれば、去年の今日はまだのぞみと出会ってすらいなかった。だから、彼女がいない目覚めの方が自然なのだ。