「拾ったの?」

意外にも正晴は普通に言った。珍しいと思いつつ頷く。

「ああ、廊下で女の子とぶつかっちゃって、その子が落としたものみたいだ。届けたいんだけど、どうやってその子を探せばいいか分かんなくてな」
「へぇ、名前とかは書いてないの?」
「んーと、平仮名でのぞみって書いてある」

のぞみ、と俺が言うと、正晴は何か思い出したかのような顔をした。そして、立ち上がる。

「ここの何室か隣にのぞみって名前の患者が入院してるよ」

俺はガバッと顔を上げた。やはり世界は狭い。特にこんな狭い病院の中なら尚更だ。

行ってみよう、という正晴の提案に賛成して、俺も立ち上がった。


着ていたTシャツだけを一瞬で着替えて、俺たちは病室を後にした。