「え⁉︎」

「あの山の方からだな」



「何度言ったらわかるんだ!俺たちは酒を盗みになんかきてない!」

「こんなことしてたら埒が開かない」

「花蓮?何する気?」

天音が聞いた。

すると、花蓮が天狗に向かって矢を放った。

「話が通じないなら、戦うしかないでしょ?」

弓矢は天狗の頬をかすめた。

「何をする。小娘」

「あなた、話が通じないみたいだから、こうした方が早いと思って」

「おのれ…人間ごときが生意気な…」

天狗は、持っていたうちわを仰いだ。

すると、立っていられないほどの強風が吹いた。

「っ!」

天音が扇子を取り出して、風を押し返した。

「はぁ…はぁ…」

天音は肩で息をした。

「お前たちの持っているもの、術がかけられているな?それを使うことができるとは…術師か?」



「何?今の風」

山に向かっていた真白たちは、山から来た強風で一旦足を止めた。

「これは天狗が起こした風だな」

「天狗?」

「あの山には、天狗の一族が住んでいる。今は見張りだけのはずだが…侵入者か?」

(要達がいるのかも…)

真白たちは急いで山に向かった。


要は、拓海と一緒に出口に向かって歩いていた。

「あの…あなたはなんでここにいるんですか?」

「突然妖が現れて気づいたらここにいた。他の奴らもここにいると思う」

「俺は、真白を探してたら充さんが現れて、大きな穴に落とされました。そして拓海さんの声で目が覚めたんです」

「充が?」

拓海は何か考えるそぶりをした。

「拓海さん?」

その時足音が聞こえてきた。

「誰かくるな」

二人は身構えた。

「要!」

「隼人?」

歩いてきたのは隼人と誠だった。


「拓海?なんでお前までここに…」

「鬼の妖にここに飛ばされた。他の奴らもここにいる可能性が高い」



天狗が四人のところに近づいてきた。

「術師がここにくるとは…酒が目的でないというのなら我らを討伐にでもしにきたのか?」

「なんの話?」

結奈が天狗に尋ねた。

「その昔、我らを倒しに術師がやってきたことがあった。村の子供を攫ったと言ってな」

天狗は歯を食いしばった。

「だが、元はと言えば人間どもが我らの怒りを買ったためだ。我らを騙し酒を勝手に盗むとは…それゆえにお前たちのいうことは信用ならぬ」

再び天狗がうちわを構えた。

その時、落雷が起きた。

「何⁈」

花蓮が上を見ると、雷獣が四人の前に現れた。

「君たち、大丈夫?」

羅衣が雷獣の背中から降りてきた。

「なんでここに…」

紫音が尋ねた。

「まずはここから逃げるのが先。白虎」

再び白虎が天狗に雷を落とした。

「うわぁ!」