「もうじき、神儀りが始まる」

真白と千輝にヤマトタケルと名乗った青年が言った。

「たしか神儀りは出雲で行われると聞いた。術師たちが向かっているはずだ」

「さっきも言っただろう。その術師が誰一人としてきていない。だからここにきたのだ」

「ってことは他の人たちも充さんに…」

真白がそう呟いた時、ヤマトタケルが口を開いた。

「あいつが何かしたのか?」

「あなたは、充さんのことを知っているんですか?」

「あぁ、玄道家に養子に来た時からな」

「え?養子?」

真白は驚きの声を上げた。

「玄道家の一人息子と、神宮家の長男が連れてきたらしい」


「琉晴さん!どこに行くんですか!」

湊は走っている琉晴の後を追いかけていた。

「着いた」

「ここって…」

やってきたのは、大きな大木の前だった。

「この木は神木だ。お前には行方不明になった奴らと合流してもらう」

「え?」

琉晴は神木に手を当てた。

神木が光り出し、湊は後ろから背中を押された。

「うわぁ!」

そのまま湊は神木に吸い込まれて行った。

「俺は、あいつを探すか」

和服を着た青年が現れた。

「この先です」

琉晴は気配のする方に向かった。


気配のする方に向かうと、二つの人影が見えた。

そこにいたのは、充と、鬼の妖だった。

「充…いや葵。お前だったのか?」

鬼の妖は神宮家の当主の姿になった。

「間に合わなかったな」

鬼が不敵な笑みを浮かべた。

「葵、なんでこんなことをした?」

俯いていた葵は小さな声で言った。

「この日が、私の願いを叶えてもらえる日だったから」

「願い?」

その時、鈴の音が聞こえてきた。

「着いたみたい」

長い行列が歩いてくるのが見えた。

「百鬼夜行…」

「琉晴、あなたには前世の記憶があるんだよね?」

「なんでお前がそのことを…」

琉晴が前世の記憶を持っているということは、葵には話していなかった筈だ。

「ならどうして、あの時もっと早くきてくれなかったの?」

「あの時って…」

「私が酒呑童子に連れ去られた日」