「おそらくそれは、術のせいだ」

「術?」

「誰かが俺たちに術をかけてる」

拓海は護符を取り出した。

「これで出口を探す。ついてこい」


隼人は、誰かに肩を揺さぶられて目を覚ました。

「しっかりしろ」

目を開けると、誠が心配そうにしていた。

「誠…さん?」

「よかった。歩けるか?」

「ここはどこですか?」

隼人は立ち上がって尋ねた。

「ここはかくりよ。妖が住んでいる世界だよ」

「なんでそんなところにいるんですか?俺はさっきまで…」

要達と一緒にいた、と言おうとしたその時、

突然目の前を、黒い何かが通り過ぎた。

「邪気!」

咄嗟に祓おうとした。

だが、それを誠に止められた。

「あれは放っておいても大丈夫だ。それより、出口を探そう」

隼人は、歩き出した誠のあとをついて行った。


その頃、紫音、結奈、天音、花蓮の四人は、天狗の住む山に迷いこんでいた。

「だから俺たちは酒なんて盗みに来たんじゃないって言ってるだろ!」

「嘘をつくな。こんなところに人間がたまたま迷いこむことがあるわけがないだろう」

目を覚まし、森の中を歩いていたら、酒を盗みに来たと疑われてしまったのだ。

「大体その酒ってなんなんだ?」

紫音は天狗に向かって尋ねた。

「この酒は神様方に献上するものだ。神儀りの際にな」