真白は、雨が止むのを待っていた。

「真白?何してるの?」

結奈が教室に入ってきた。

「あれ?部活は?」

「今日は気分が乗らなくて。うちの学校、結構自由なところあるから」

真白は確かにそうだなと思った。

運動部は、全国大会に行く部活もあれば、ただ楽しんでいるだけ、という部活もある。

文化部も同じで、コンクールで入賞したりする部活もあれば、結奈のようにその日の気分で、部活に出ない生徒もいる。

良くも悪くも、自由な校風なのだ。

「なんか、描きたいもの思いつかなくて帰ってきちゃった」

「そっか」

結奈は真白の座っている席までやってきた。

「真白と二人で話すのって二回目だね。前は去年の夏頃話しただけだったから」

真白は去年のことを思い出した。

「確か、七月あたりだったよね。私まだ天音と花蓮とは二人で話したことないかも」

「そうなんだ。花蓮は部活のことが多いし、天音はよく外に出かけることが多いんだよね。私は家にいる方が好きだけど」

「私は半々くらい。よく春香と一緒に出かけたり、家で本を読んだりしてることもあるよ」

雨の音が強くなってきた。

「そういえば春香、陸上今日は休みかな。雨だから」

「春香は陸上部なんだ」

「うん。小さい頃から走るの早かったんだよ」

いつも先に前を歩いていた春香を真白は追いかけていた記憶がある。

「私、お姉ちゃんがいたの。六個歳の離れた」

真白は前に要から結奈の姉が火事で亡くなったことを聞いたのを思い出した。

「確か、火事で亡くなったって…」

「うん。お姉ちゃんは絵を描くのが好きで、コンクールで金賞を取るくらい絵が上手だった。私が美術部に入ったのもお姉ちゃんの影響だし」

真白は、きっと仲がよかったんだろうな、と思った。

真白は兄弟はいなかったが、春香とは本当の姉妹のように育った。

なので、春香に双子の妹がいたというのを聞いた時は驚いた。

(いつか、叔母さんともちゃんと話せるようになるといいんだけど…)

まだそれには時間がかかりそうだ。

「雨、上がったみたいだね」

結奈が窓を見て言った。

真白も目を向けると、綺麗な虹が出ていた。



紫音は、部活が終わったあと、水道で水を飲んでいた。

ふと、外を見た。

さっきまで降っていた雨が嘘のように綺麗な青空が広がっていた。

(さっきの雨で桜もだいぶ散ったかもな)

水道の蛇口をひねって水をとめた。

「そういえば天音、なんで桜を見て悲しそうにしてたんだ?」

紫音が遠くから見かけた時は、桜を見ていた気がした。