琉晴がやってきたのは、河原だった。

「体弱いくせに、無理するから…」

琉晴は、一人川を見つめて、つぶやいた。

その時、渚の視界が歪んだ。

(なんだ…?)

渚はそのまま意識を失った。


次に目を覚ました時には森に戻ってきていた。

「なんだったんだ今のは…」

頭を抑えながら立ち上がった。

「目が覚めたか」

隣にいた慧が、言った。

「慧…」

「大丈夫か?」

少し頭痛がするが問題なかった。

「あぁ大丈夫だ。春香ちゃんは?」

「まだ寝てる」

慧が視線を向けた先に春香が横になっていた。

「あの香水のせいか?」

「あの香水は、霧人…寿人の弟の生まれ変わりが柏木に渡したものだったんだが、香水に術がかけられていたみたいだ。神宮の人間に調べてもらっていたんだが…」

「ん…」

そこまで話したところで、春香が目を覚ました。

「本条、大丈夫か?」

「…はい」

そう答えてはいるものの、ぼーっとしているようだった。

「春香ちゃん、どこか具合が悪いのか?」

渚が心配そうに春香の肩に手を置いた。

「いえ…大丈夫です」

顔色が悪く、青白くなっていた。

「早く森を抜けた方が良さそうだな」

慧は、そう言って護符を取り出し、宙に放った。

「これを追っていけば森を抜けられるはずだ」

三人は護符を追って歩き出した。


要は、病院のベッドで目を覚ました。

(俺は…なんで病院に…)

頭を触ると、包帯が巻かれていた。

右腕にも同じように包帯が巻かれている。

「そんなにひどい怪我をしたのか?」

ベッドから起き上がったと同時に病室のドアがノックされた。

「要」

ドアが開いて中に入ってきたのは湊だった。

「要、怪我したって聞いた。大丈夫か?」

「はい。他のみんなは大丈夫ですか?」

それを聞いた湊は首を傾げた。

「何言ってるんだ?お前が家で怪我をしたって聞いたからお見舞いに来たんだ」

「俺が…家で?」

「高校、合格したばかりだったのにな」

(え?)

話が噛み合わない。

「あの…今は何月ですか?」

要は恐る恐る聞いた。

「今は三月だろ?」

病室のカレンダーを見ると、一年前の三月だった。

「どういうことだ?」

「おい!」

要が混乱していると、どこからか声が聞こえた。

その途端、視界が歪んだ。

次に目を開けると、目の前には拓海がいた。

「やっと目が覚めたのか」

「俺は…」

「お前うなされてたぞ」

(うなされていた?)

嫌な夢を見ていたわけではない。

ただ、違和感があった。

「昔の夢を見てたんです。ただ少し変なところがあって…」