懐中時計時計の針が、逆戻りを始めた。

そして、まばゆい光であたりが包まれた。

沙羅は思わず目を瞑った。


「…」

何かの気配を感じて、琉晴は顔を上げた。

「どうしたんですか?」

「向こうで何か…」

湊は首を傾げた。

だが、どこか違和感を覚えた。

「人の声が聞こえませんね」

さっきまで騒がしいくらいだった声がまったく聞こえなくなった。

「どうなってるんだ?」

「琉晴」

着物を着た青年が姿を現した。

「どうした?」

「この先にあの男の気配がします」

「この先にいるのか」

二人のやりとりを聞いていた湊は首を傾げていた。

「どうかしたんですか?」

「湊、予定変更だ。頼みがある」



その頃、晶は家に戻っていた。

「外が静かだけど、何かあったのか?」

もうとっくに太鼓や笛の音が聞こえてきてもおかしくない時間だ。

「とりあえず、これを持っていくか」

晶は段ボールに入った提灯を抱えた。


「ここは…」

沙羅はゆっくり体を起こした。

「あの子は…いないのね」

周りを探してみても充の姿は見当たらなかった。

「こんなことをしても、意味はないのよ…葵」