「術が…!」

「お前たち、人間だな?」

真白は後ろを振り返った。

「あなた、妖?」

そこには中性的な顔立ちをした青年が立っていた。

「僕はヤマトタケル」

「ヤマトタケル…神がなぜこんなところにいる?」

(え?神様?今目の前にいるこの人が?)

琥珀が言ったその言葉に真白は目を丸くした。

「色々あってこっちにきたんだよ。トラブルが起きたみたいだからな」

「トラブル?」

「神儀りが始まるっていうのに、巫女も術者もいない。これは一体どういうことだ?…大体、なんであいつはいないんだ」

途中から独り言を言うようにぶつぶつ呟いていた。

「まさか…まだ出発できていないのか?」


「さて、これでようやく出雲に出発できる」

充は、打出の小槌をしまって言った。

「こんなところにいたの」

「沙羅」

「いつからそこにいたの?」

「ついさっき。それより今何したの?」

沙羅が鋭い目つきで充を見ている。

「見られちゃったのか」

充は残念そうに肩をすくめた。

そして打出の小槌を手に持った。

「それって…」

沙羅は信じられないものを見た顔になった。

「大黒天の打出の小槌」

「なんでそんなものをあなたが持ってるの?」

「蔵に置いてあったのを見つけたんだ」

それを聞いた途端、沙羅の表情が変わった。

「あの蔵に入ったの⁈あの蔵には限られた人しか入れないのに!」

「でも、どうしてもこれが必要だったんだ」

「それを使って、何をするつもり?」

「過去に戻る」

「それは過去に戻るためのものではないのよ?」

「わかってる。だから…」

充が小槌を一振りした。

すると、金色の懐中時計が出てきた。

「これを使う」