「ところで、君は一緒に行かなくて本当によかったの?」

琉晴が湊に聞いた。

「俺までいなくなるのは流石に困るんじゃないですか?」

「まぁ否定はしないけど、術具を持っている子たちは大丈夫だとしても、あの子はどうするの?確か、真白ちゃんの従姉妹の…」

「本条さんですか?大丈夫です。ちゃんと守るように言いましたから」


「いたた…」

「大丈夫か?」

春香は差しのべられた手を取った。

「うん…ありが…って鵺⁈」

見上げると、鵺が立っていた。

「どうしてここにいるの?湊さんと一緒だったんじゃ…」

「湊に頼まれた。お前を守るように」

「湊さんに?どうして?」

「お前は他の奴と違って、術を使ったり、危険から守ってくれる奴が常に近くにいるわけではないからな」

「そうだね…ありがとう」

春香は、そう言って立ち上がった。

「真白たちを探さなくちゃ」


「どういうことだよ。今は夕方でもなんでもないのに」

神隠しは夕暮れ時に起こることが多いらしい。

もう空は真っ暗だ。

「必ずそうとは限らないわ。何があったか調べないと。晶、あれ持って来てる?」

「あぁ、一応」

晶は手鏡を取り出した、

「これで誠たちに何が起こったかみてみよう」

鏡が歪み、部屋の一室が現れた。

「これは…一体どうなってるんだ!」

鏡には、黒い影に引きづり込まれる誠たちが映っていた。

「何こいつ。妖?」

由紀が鏡を覗き込んだ。

「今のは、鬼か?」

形からしてそんなふうに見えた。

「でも、なぜ屋敷に…屋敷は結界で覆われているはずだ」

「誰かが招き入れたとか?」

結界は、家のものが招き入れた場合、効力を失ってしまう。

「だが、屋敷にはこんな鬼を屋敷に入れる人間はいない」

晶が言った。

「だとしたら、誰かに化けてたとか?」

「でもそんなこと誰が…」

「こんなところにいたのか」

「!」

このばにいた全員が凍りついた。

「酒呑…童子」

「何これ…体が、動かない」

「なんでお前がここに…」

「千年ぶりだな」


真白と千輝は百鬼夜行の後をついて行っていた。

「冴島先生、あれ…」

千輝は、真白の視線を方向を見た。

橋が見えてきた。

「あの橋を渡れば現世に戻ることができるな」

琥珀が言った。

「あともう少しだ」

真白達が橋を渡ろうとした時、

「何者だ?」

後ろから声が聞こえた。

持っていた護符が空中で切り刻まれた。