「ここから出る方法はないんですか?」

真白は千輝に尋ねた。

「俺もこんなことになったのは初めてで、対処法がわからないんだ」

二人が困り果てていると、真白の首からかけていた首飾りが光った。

「なんだここは。妖の気配がするな」

「琥珀!」

「まさか、かくりよに迷い込んだのか?」

「かくりよ?」

聞き慣れない言葉に真白は首を傾げた。

「俺たちの普段住んでいる世界を現世、妖たちが住んでいる世界をかくりよと言うんだよ」

千輝が説明してくれた。

「なぜお前たちはこんなところにいる?」

「それが…」

真白は今まで起きたことを話した。

「…なるほど、そいつが持っていた小槌でここに連れてこられたのか」

琥珀は腕を組んだ。

「おそらくあの子が持っていた小槌は打出の小槌だ」

「打出の小槌?」

「元は大黒天という神様の持ち物なんだけど、なんらかの形であの子が持っていたみたいだね」

「そんなものをなぜ人間が持っている?」

琥珀が顎に手を当てた。

「それはあの子が、何か特別な力を持っているからだと思う」

「特別な力ですか?」

そこまで話した時に、琥珀が耳を立てた。

「どうしたの?」

「二人とも隠れろ」

真白と千輝は、近くの木に隠れた。

すると、鈴の音が聞こえてきた。

シャラーン…シャラーン…

木の影から覗いてみると、一列の行列が歩いてくるのが見えた。

「あれは…百鬼夜行」

千輝が呟いた。

「あれが…」

「おそらくこのまま、歩いて行くはずだ。この行列について行けば、戻ることができるかもしれない」

「でも、どうやってついて行くんですか?見つかったらまずいんじゃ…」

千輝は札を取り出した。

「これを持っていて。そうすれば、妖たちに気づかれることはないから」

真白はそれを受け取った。

「琥珀、ありがとう。戻って大丈夫だよ」

真白はそう言ったが、琥珀は首を振った。

「いや、ここはかくりよ。私も側にいた方がいいだろう,」

そして、人間の姿になった。

「さぁ、行くぞ」


「全く、いくら歩いても景色が変わらないな」

慧と渚は、森の中を彷徨って歩き続けていた。

「ところで渚はなんであんなところにいたんだ?」

「お前の声がして部屋のドアを開けたら、妖がいてな。それでこの森まで飛ばされた」

「その妖はどんなやつだったんだ?」

「おそらく、鬼の類だ。かなり強力な妖だろう」