「は?それどう言うことだ?」

「だから、何人かいなくなったから、その代わりを私たちが掛け持ちしてやるんだって」

由紀が拓海に言った。

「なんでいきなり人がいなくなるんだよ」

「あぁ、だから向こうが騒がしかったんだ」

「渚もいなくなったって言ってたね」

誠と恵も続けて言った。

「誠は沙羅のところにいなくていいのか?」

「俺はこのことを伝えるように言われたから一旦戻ってきただけ」

「仮にも婚約者だしね」

由紀が言った。

「誠くらいだろ。いきなり婚約させられてなんの不満も言ってないの」

「渚の時なんかは大騒ぎになったって言ってたね」

由紀と拓海が言った。

「俺は小さい頃からずっと言われてきたから。だからそう言うものなんだと思ってた。不満も何もないよ。それに…」

誠が言葉に詰まった。

「誠?」

恵が誠に呼びかけた。

はっとした誠は顔をあげると、

「そろそろ始まる。持ち場につかないと」

そう言って、慌てて出て行った。

「どうしたんだ?あいつ」

「さあ?」

三人も後に続いて部屋を出た。



「ねぇ、充どこ行ったか知らない?」

別の部屋では、羅衣、若葉、日和の三人が集まっていた。

「昼間から見てないよ。また琉晴のところにいるんじゃない?」

「もうすぐ出雲に行く時間なのに…」

その時、部屋のドアが開いた。

入ってきたのは、誠だった。

「お前たちまだいたのか。もう出発しないと間に合わないぞ」

「ねぇ、充見なかった?」

日和が訊ねた。

「知らないな。一緒じゃなかったのか?」

日和は頷いた。

誠は懐から護符を取り出した。

「こいつに探させるからお前たちは早く…」

誠が手に持っていた護符から火が上がり燃えてしまった。

「…なんだ。今のは…」

「誰かが、術を使って邪魔してる」

若葉がつぶやいた。

「この気配…まさか…!」

誠がそう言うと同時に、部屋の蛍光灯が割れた。

「ふふふ…ここにいるのはお前たちだけか」

黒い影から声が聞こえた。

そして、その場にいた全員を影が捉えて引きずり込んだ。


「さて、俺たちもそろそろ移動しようか」

琉晴は、湊に言った。

「なんで俺はあなたと一緒に行動しなくちゃいけないんですか」

湊が不満そうに言った。

「そんなの決まってるでしょ。鵺がいるから。俺に協力してもらう」

「…約束は守ってもらいますよ」

湊は低い声で言った。

「もちろん。俺は妖との約束は守るよ」