「寺から出ても誰にも会わない…スマホも繋がらないし、どうすれば…」

紫音はため息をついた。

「君、どうかしたのかな?」

目の前に僧侶が立っていた。

「すみません。道に迷ったみたいで…」

「そうか。ではついておいで」

僧侶に言われて、紫音は後をついて行った。


しばらく歩いた後、灯りがある場所に来ることができた。

「よかった…」

「遅くならないうちでよかった。この近くには、森があって、妖たちの住む世界に繋がっているからね」

「…そうだ!真白!あの、友達とはぐれたんです!」

それを聞いた僧侶は、眉間に皺を寄せた。

「今から戻るのはやめた方がいい。今夜は百鬼夜行が行われる日で、妖の術にかかってしまうかもしれない」

「でも、探しに行かないと!」

紫音が必死に訴えると、僧侶は懐からお札を取り出した。

「なら、これを持っていなさい。君を守ってくれるから」

紫音はお札を手に握らされた。

「ただし、一人で行ってはいけないよ」

「紫音!」

後ろから要の声が聞こえた。

「どこに行ってたんだ。みんな探してたんだぞ」

「この人に助けてもらったんだ」

僧侶が軽く頭を下げた。

「私もここに用事があってきたんだ。私も祭り事の役割があるからね」

そう言うと、僧侶は屋敷の中に入って行った。

「紫音、真白は?」

「はぐれたみたいで、見つけられなかった」

「高嶺先生と冴島先生も探しに行ったまま、戻ってきてないんだ。これから俺たちも探しに行こうと思ってたんだ」

一旦、旅館の部屋に戻った。

「紫音!」

天音たちが駆け寄ってきた。

「よかった。真白は?」

春香が訊ねた。

「途中ではぐれたんだ」

「え⁈」

春香が青ざめた。

「だからこれから探しに行こうと思うんだけど…」

「こんな時間に、私たちがいなくなって大丈夫かな?もうすぐ祭りも始まるのに…」

「湊さんに相談してみるか」


要たちは、湊のところに行った。

「うん、いいよ」

あっさり許可がおりた。

「でも、大丈夫なんですか?俺たちにも役割があったはずしゃ…」

隼人が不安そうに言った。

「それは大丈夫。さっき話をして、他の人たちで代わりができそうだって。だから探しに行ってきて。俺はどうしても抜けられそうにないから」

「ありがとうございます」

「でも気をつけてね。今夜は妖の住んでいる世界と俺たちの住んでいる世界が繋がってるから」