そう言って千輝は、外に走って行った。


慧と春香は、はぐれた班の子達を探していた。

「いないな」

「すみません…考え事をしながら歩いてたので、気がつかなかったんだと思います」

「気をつけろよ」

「はい…」

歩いている間に、宿泊する宿に着いてしまった。

「着いちゃいましたね」

「もしかしたら先に戻ってるかもしれない。行って見てきてみろ」

「わかりました」

春香は自分の泊まる部屋の方向に歩いて行った。

「結局、渚のところにはいけなかったな」

外はもう、日が暮れてきていた。

「でもまぁ、このあとどうせ会うしな」

その時にお面に着いて聞けば問題ないだろう。

「千輝は…どこに行ったんだ?」

もう見回りから戻ってきていてもいい頃だった。

だが、ここにはいないようだった。

「おかしいな…何かあったのか?」



「ここにも…いないか」

千輝は、真白と紫音を探していた。

一体どこに行ったのだろう。

「こんばんは。どうかされたんですか?」

突然後ろから声が聞こえた。

千輝が振り向くと、充が立っていた。

手には金色のハンマーのようなものを持っている。

「…なぜ君がそんなものを」

千輝は充の持っているものに見覚えがあった。

「どこで手に入れたの?」

「あなたに教える必要がありますか?」

恐る恐る千輝が尋ねると、充は落ち着いた声で返した。

「それは大黒天の打出の小槌だよね?いくら術師の家系とはいえ、気軽に持ち出していいはずがない」

「ところであなたはここで何を?」

話を逸らすように充が訊ねた。

「柏木さんと赤坂くんを探しているんだ。どこにいるか知らない?」

しばらく間があってから、充は口を開いた。

「知っていますよ。お連れしましょうか。…会えるかどうかわかりませんけどね」

充は小槌を一振りした。

千輝の立っている場所に穴が現れた。

「うわっ!」

何が起こったのかわからないまま、千輝は穴に落ちて行った。


その頃、要と花蓮が宿に帰ってきていた。

「戻ってないの?真白と紫音が?」

「うん。一緒だった班の子達の話だと、冴島先生が探しに行ったみたいなんだけど」

結奈と隼人も同じタイミングで戻ってきたようだった。

「今回はよく知らない道も結構あるから探すのに苦労するかも」

要達より先に戻ってきていた天音が言った。