「どこに行ったんだ…」

琉晴は、街中を走り回っていた。

「琉晴、もう屋敷に戻らなくては…」

着物を着た男性が言った。

「でも…」

こうしている間にも時間は過ぎて行く。

「琉晴さん?」

琉晴が顔を上げると、春香が立っていた。

「どうしたんですか?顔色悪いですよ?」

心配そうに春香がしゃがんで、手に持っていた飲み物を渡してくれた。

「君は確か…あの子たちと一緒にいた…」

そこに慧が通りかかった。

「本条、何してるんだ?」

「高嶺先生、琉晴さんの具合が悪そうで…」

慧は琉晴の方を見た。

「こんなところで何してる?今日は忙しいんだろ?」

「それどころじゃない…」

「琉晴、一旦屋敷に戻りましょう。もしかしたら、屋敷にいるかもしれませんよ」

「…そうかもな」

琉晴は、屋敷に戻ろうと、きた道を戻った。

「で、本条はなんで一人でいるんだ。同じ班の奴らはどこに行った?」

「それが、はぐれたんです」

「連絡はしたのか?スマホ、持ってるだろ」

「充電切れてたみたいで…」

それを聞いた慧は、小さくため息をついた。

「一緒に探してやる。行くぞ」


天音は、土産物屋にきていた。

「天音」

中には、結奈と隼人がいた。

「二人もここにいたんだ」

「うん。さっきまで、冴島先生もいたんだよ」

「そうなんだ。ここ、かんざしとか扇子とかいろんなものがあるんだね」

店内には、他にも茶碗や皿などの食器も売っていた。

「あ、あっちには楽器も売ってるみたい」

奥の方に、こじんまりとしたスペースがあった。

三味線や琴、笛などがあった。

隼人は、椿の飾りのついたかんざしを手に取った。

(このかんざし、真白が夏祭りに着てた浴衣に合うかもな)


千輝はあらかた見回りも終わったので、宿泊する宿に戻ってきていた。

「冴島先生!」

二人の生徒が走ってきた。

「どうしたの?」

「柏木さんと赤坂くん見ませんでしたか?探してもいないんです」

「もしかしたら、宿に戻ってるかもしれないと思って、俺達も戻ってきたんです」

「最後に二人を見たのはどこ?」

二人は顔を見合わせた。

「晴明神社のところです。私たちがお守りを買っている間に境内の方に行ってくるからって…お守りを買って、境内に行ったら二人ともいなくて…」

「あ、そういえば、誰かと話してたような…」

「わかった。俺が探してくるから、二人は部屋で待ってて」