千輝は、見回りの途中で隼人と結奈がいる班に遭遇した。

「あ、冴島先生」

結奈が千輝に声をかけた。

「先生、写真撮ってもらってもいいですか?」

班にいたもう一人の女子生徒がスマホを出して千輝に言った。

「うん。いいよ」

千輝はスマホを受け取って、写真を撮った。

「ありがとうございます」

女子生徒と結奈は、今撮った写真を二人で覗き込んでいる。

「今回は神崎くんとは違う班になったんだね」

千輝は、土産物屋を見ていた隼人に声をかけた。

「別にいつも一緒にいるわけじゃありません」

隼人は、ぶっきらぼうに答えた。

「相変わらずだね。そんなに俺が嫌い?」

隼人は黙ったままだ。

「まぁ無理もないか。俺は前世で君に酷いことをしたもんね」

「でも、あなたの意思でやったわけではないですよね? 一方的に疑っていたのは俺の方なので。それに、前世の未影と今のあなたは違いますから」

「優しいんだね」


要は、鳥居の前に立っていた。

「初めてきたけど、やっぱりすごいな」

いくつもの鳥居が遠くまで並んでいる。

「私も初めて見た」

隣にいる花蓮が言った。

要と花蓮は、同じ班だった。

「今頃、みんなも楽しんでるのかな」

「さっき、天音から写真送られてきたよ」

花蓮はスマホの画面を要な見せた。

写真には、舞妓さんと一緒に映った天音がいた。

「そういえば、真白と紫音は同じ班なんだよね?」

思い出したように要が言った。

「うん。紫音、方向音痴だから大変そうだけど」

「真白も気がついたらいない時とかあるんだよね」



真白達の班は、とある神社にきていた。

「ここ、『晴明神社』って言うんだって」

真白がパンフレットを見ながら言った。

「晴明って安倍晴明のことだよな?」

安倍晴明は、平安時代に活躍した陰陽師だ。

「すごく強かったんだよね?」

「そうですよ。とても強かったんです」

真白と紫音の前に、充が立っていた。

隣には、青年の姿もある。

「充さん?どうしてここに…」

紫音が訊ねた。

「今日は百鬼夜行が行われます。出雲では神儀りも。ですから今日が一番いいと思ったんです」

充の手には小槌が握られていた。

「それは…」

紫音が何か言いかけた時、充が小槌を一振りした。

すると、真白と紫音が立っている地面のところに黒い大きな穴が現れた。

「……!」

声を上げるまもなく、二人は穴の中に落ちて行った。