「わかってる。だから今こうして追いかけていたんだ」

琉晴は、再び走り始めた。


慧は、見回りのために京都の道を歩いていた。

「千輝は他の場所を見回りに行くって言ってたし、少し見回りをしたら渚のところに行くか」

その時、どこからか花の香りがしてきた。

(この香り、どこかで…)

「こんにちは」

慧の目の前に充が立っていた。

「見回りですか?」

「そうだが…」

「そうですか。先生になると大変なんですね」

それだけ言うとお辞儀をして歩いて行った。

(あの香水の香り、まさかあいつからか?)

慧は霧人の術から覚めたあと、残った香水を調べるために、一緒に持ってきていた。

それを神宮家で調べると言うので、置いてきたのだ。

割れてしまっていたので、ちゃんと調べてもらえるかどうかはわからなかったが。

「とりあえず、今は見回りが先だな」

慧はどこか引っかかるところはあったが、今は見回りに集中することにした。



充は、自分の家に帰ってきた。

「おかえり」

部屋に戻ると、美しい青年がいた。

「帰ってきたのか」

その隣では、老人がお茶を飲んでいる。

「みんな忙しそうにしてたよ。僕は神儀りの方に行くから、出雲にいなきゃいけないんだけど」

「そうだな。しっかり務めを果たせ」

「うん。わかってるよ」

老人に言われた充は頷いて言った。

「僕はまだやらなきゃいけないことがあるから」

そう言って再び部屋を出て行った。

ドアを閉めた後、歩き出そうとした充は誰かに呼びかけられた。

「久しいな」

その姿を見た充は、驚いた表情になったが、にこりと笑った。

「久しぶり。酒呑童子(しゅてんどうじ)