神宮家の当主の部屋に、琉晴が入ってきた。

「…いない」

この時間は部屋にいるはずの当主の姿がなかった。

琉晴は、外に飛び出して行った。


真白は、予定に入っていた観光名所を回っていた。

「竹がいっぱい」

周りには竹林がそびえ立っている。

(あれ?)

真白は、見覚えのある人物を見つけた。

着物を着て、下駄を履いている若い男性だった。

真白はその男性を追いかけた。

「真白?どこ行くんだ!」

真白が突然走り出したことに気がついた紫音が、真白の後を追いかけた。

「待ってください!」

男性を見失わないようにしながら、真白は必死に追いかけた。

「真白!」

追いついた紫音に腕を掴まれた。

「いきなりどうしたんだ」

「今、知り合いがいたから…」

「一人でいなくなったらみんな心配するだろ」

「…ごめん」

真白と紫音は、きた道を戻ろうとした。

しかし、必死に走っていたせいで、どこをどうやって来ていたのかわからなくなっていた。

「どうしよう…」

「迷ったな…」

真白達が途方に暮れていると、

「どこに行ったんだ!」

前方から、琉晴が走ってきた。

「琉晴さん?どうしたんですか?」

「君たちは…あぁそうか。今日から修学旅行なんだよね」

琉晴はかなり急いで走っていたのか、苦しそうに肩で息をしている。

「俺は人を探していたんだ」

「私もです。着物を着ていて、下駄を履いてる、若い男の人なんですけど」

「若い男?」

「それは私のことでしょうか?」

突然目の前にあの男性が現れた。

「うわぁ!」

真白と紫音は、驚いて尻餅をついた。

「驚かせてしまって申し訳ありません」

「お前もいたのか」

「えぇ。あなたが急いで走って行かれたのが見えたので」

「あ、いたいた、柏木さん、赤坂くん!」

「あ…」

真白と同じ班の二人が探しにきたようだ。

「もうどこ行ってたの?探したんだよ?」

「また赤坂が変な道に行ったんだろ?」

「えっと…」

なんと言い訳しようか悩んでいるうちに二人が真白と紫音の腕を引っ張った。

「早く全部回らないと、時間がなくなっちゃうよ?」

「ちょっと待って…」

真白が何か言う前に、どんどん連れて行かれてしまった。



「…ところで、誰を追いかけていたんです?」

真白達が見えなくなった後、着物を着た男性が聞いた。

「あいつが、屋敷からいなくなった」

男性は、それを聞いて目を見開いた。

「今日は人も多い。早く見つけなければ、大変なことになりますよ」