真白は、玄関前で拾ったお札を見ていた。

「それは、拾ったのか?」

琥珀が、覗き込んできた。

「うん。でも、悪いものではない気がして…」

「見せてみろ」

真白はお札を琥珀に渡した。

琥珀は、しばらくお札を見ていた。

「…そうだな。これはどちらかと言うと身を守るための札だ」

「でも、誰のものだかわからないの」

「そうか、少し待て」

琥珀は目を閉じてお札に手をかざした。

「この札の持ち主は、祓い師の使っている札だ。危険なものではないから持っていても問題はない」

「そう、なんだ」

真白はしばらくはこのお札を持っておくことにした。



「え?今日、お客さんが来てたの?」

実家に帰って来た湊は、朱莉から話を聞いていた。

「とてもお世話になった人でね。渚と湊の話もしたのよ」

「それって、どんな人なの?」

「普段は、いろんなところを旅しているのよ。本職はお坊さんだから」

「へぇ。ところで、父さんはまだ帰って来てないの?」

「今、京都にいるのよ。泊まることになるかもしれないって。湊もいずれ、同じことをすることになるんだから、今のうちにいろいろ聞いておいた方がいいわよ」

「わかってるよ」


湊は自分の部屋に戻った。

「俺も桜咲家を継ぐんだから、今のうちに色々経験しておいた方がいいよな。でもその前に、鵺の化身を琉晴さんから返してもらわないと」


湊が鵺と会ったのは、幼稚園の時だった。

外で遊んでいた時に、大きな白い鳥が飛んできたのだ。

その白い鳥は、裏山の方に飛んでいった。

気になって追いかけると、白い鳥が青年の姿に変わるのを見た。

『お前、ここで何してる?』

その青年は、鵺と言った。

その日から、湊はよく鵺と話すようになった。

そんなある日、突然前世の記憶が戻った。

その記憶が戻ったことによって、鵺と前世でも一緒にいたことを知った。

それを鵺に話すと、

『なら、お前の力になってやる」

湊は、鵺と眷属の契約を交わした。



「俺が余計なことをしなければ、鵺も力を持ったままでいられたかもしれなかったのに…」


今は、戻れたとしても、半妖の姿だ。

「祭典まであと二ヶ月…琉晴さんが全てが終わったら返すって言ってたのは、百鬼夜行と神儀りが終わったあとって意味か?」

詳しくは聞けなかったので、まだ断定できない。

「あの護符も、長くは使えないからな」

鵺のために作ったあの護符は、かなりの霊力を注いで作った。

強力なのだが、その代わり使用期限があった。

「とりあえず、あれが終わるまで持ってくれればいい」



要は、真白の家の前に落ちていた、お札について考えていた。