「戻りました」

真白たちは本を抱えて、図書室に戻った。

「おかえり。こっちも大体調べ終わったところだよ」

湊がそう言った。

真白たちは、テーブルに本を置くと、椅子に腰掛けた。

「これが、学校から借りてきた本です」

要が持ってきた本を湊に見せた。

「俺が琉晴さんから聞いたのは、昔、あの学校があった場所は、巫女の術具を保管するのに使われていたことがあるらしい」

「巫女の術具の保管?」

「明治に入ってからは、術具は限られた人しかわからないように厳重に保管されていたようだよ」

「じゃあ、今紫音たちが使っているのは、今までどうしていたんですか?」

真白は、疑問に思って訊ねた。

「あれは、桜咲家で保管していた物だよ。あの術具は、霊力のある人しか使えないけど、とても価値のある物だから、持ち主がいない時は、蔵に入れてあったんだ。霊力のある人が管理した方が安全だから」

「そうだったんですね」



「今日は突然お邪魔してしまってすみませんでした」

「いえいえ、またいらしてください」

男性は朱莉に一礼すると、桜咲家の屋敷を後にした。

「さて、京都に向かうとしましょうか」

男性は、お札を取り出して何かつぶやくと、その姿が跡形もなく消えた。



いろいろ見ているうちにすっかり日が暮れてしまった。

「もう夕方だね。今日はこれくらいにして帰ろうか」

「わかりました」

湊の掛け声に真白たちは立ち上がった。

「真白」

要が声をかけてきた。

「どうしたの?」

「家まで送るよ」


真白と要は、並んで歩いた。

屋敷の近くまで来た時に、真白が何か見つけた。

「あれ、なんだろう?」

玄関の前に落ちていたお札を真白が拾い上げた。

「これは、誰かが術を使った後だ。でもなんでこんなところに…」

要が不思議そうに言った。

「もしかして、桜咲家にまたお客さんが来てたのかも。それに、今日は風が強いから、飛んできたとか」

さっきから、少し強い風が吹いていた。

「術を使った後は、基本的にお札は残らないんだ。誰かが意図的にここに置いたのかも」

「それって誰が…」


京都では、着々と準備が進められていた。

「これくらいかな」

琉晴は紙に何か書いていた。

「これで、何かあっても大丈夫なはず」

それを引き出しにしまった。

「琉晴、仕事は終わりましたか?」

充が琉晴の部屋に入ってきた。

「うん。祭典の準備も、あと少しで終わりそうなんでしょ?」

「はい。なんとか間に合いそうですよ」