「お久しぶりです。何年ぶりでしょう?」

「渚と湊がまだ小さかったので、十年以上前になりますね」

朱莉(あかり)が男性にお茶を出した。

「今年は百鬼夜行と神儀りが重なったことで、退魔師と術師の名家は大忙しだそうですね」

「ええ、主人もさっき出かけて行きました」

「私も京都に呼ばれてはいるのですが、こちらで早めにやらなければならない仕事があったんですよ」

「そうなんですか。大変ですね」

朱莉はニコニコしながら会話に応じた。

「あなたにお会いしたのは、千早さんのことについての時でしたね」

「そうですね。お陰で千早も普通に生活できています」

「それはよかったです。…ただ、その後に不幸が重なったようで…」

朱莉が真剣な表情になった。

「はい。実の娘を数ヶ月で亡くして、兄夫婦も事故で亡くなったので、相当精神的に参っています。今でも、兄夫婦の娘に対して、許せない気持ちがあるようで…」

「その娘さんは、かなり強い霊力を持っているそうで」

「そうなんです。ですから、いろいろな人からも狙われやすいかと」

「それが、また悲劇を生まないといいですけどね…」



要と隼人は、ようやく真白たちのいる図書館に着いた。

「遅くなってすみません」

二人は頭を下げた。

「大丈夫だよ。さっき始めたばかりだから。そうだ。二人は学校の方に行って、司書の先生から本を借りてきてもらえる?」

湊に言われた要と隼人は、頷いた。

「わかりました」

「あ、私も行く」

真白も席を立ち上がった。


三人は学校の図書室にやってきた。

「すみません。ここの学校の郷土史をお借りしてもいいですか?」

「ええいいわよ。高嶺先生から話は聞いてるから」

女性の司書の先生は、その本を持ってきてくれた。

「ありがとうございます」

本は何冊かあった。

三人で分担して持って行った。

「やっぱり、結構古いんだね」

真白たちの通っている学校は創立してからかなりの時が流れている。

「昭和の初め頃に建てられたのよ」

司書の先生が言った。

「そんなに昔から?」

真白は、興味を持って訊ねた。


「私もこの学校の卒業生なんだけど、やっぱり前とは違うわね。私が通っていた時は、旧校舎も使って授業をしていたのよ」

昔は今よりも、生徒の人数が多く、旧校舎と本校舎両方を使っていたようだ。

「ところで、学校の歴史を調べてどうするの?」

「夏休みの自由研究にしようと思ったんです」

「そうだったの。頑張ってね」

司書の先生にお礼を言って、真白たちは図書館に戻った。