「え?学校の歴史を調べたい?」

真白は次の日、慧にそう伝えた。

「はい。もしかしたらあの本のことが何かわかるかもしれないと思って」

「それはいいが、柏木一人で調べるのか?」

「いえ、湊さんと、みんなも一緒に」

「こっちに帰ってきてるんだったな。わかった、この学校の歴史に関する本を借りられるかどうか司書の先生に聞くといい」

「ありがとうございます」


学校から帰ってきた真白は、湊から借りたノートを開いた。

「それにしても、なんでこんなに色々変わったりしたのかな」

「何を見ているんだ?」

朱里(しゅり)が真白のところにやってきた。

「朱里は、これについて何か知ってる?」

真白はノートを見せた。

「巫女の術具について書かれているんだけど」

「術具?なんだそれは?」

やはり、正式な呼び方は知らなかったらしい。

「巫女の道具のこと。正確には術具って言うんだって」

「そうだな。俺が知っているとすれば、妖刀については知っているぞ」

それは今、紫音が使っているものだ。

「教えてくれる?」

朱里は、人間の姿になった。

「あの妖刀は、蘇芳(すおう)が少年に渡したものだった」

朱里が真白に話してくれたのは、このような話だった。

彩葉の屋敷が霧人に襲われたあと、夜叉について行った琥珀(こはく)以外は、旅に出ていたらしい。

蘇芳は、旅先で一人の少年に出会い、一本の妖刀を渡したそうだ。

「なんで蘇芳は、その人にそんな大事なものを渡したりしたの?」

「そこまでは話してくれなかった。ただの気まぐれか、何か感じ取ったのか…」

それから朱里は話を続けた。

「しばらくして、妖刀の持ち主が変わっていることに気づいたようだ。それは、寿人と清華の息子だったらしい」

「え⁈」

なぜそこで、そんな人物が出てくるのか真白は不思議だった。

「それからまた何かあったとか?」

また謎が増えてしまった。


次の日、真白は他のみんなにも声をかけた。

「この学校の歴史を調べるの?」

「うん。あと周囲の土地のことも」

春香が真白に訊ねた。

「確かここって、何回か建て替えられたりしてたはずだよ」

花蓮が言った。

「そうなの?」

「前は病院で、その前はお墓だったかな…」

天音も続けて言った。

「だから、不思議なことが起こっても、みんなあんまり気にしなかったの」

何かといわくつきの場所だったようだ。

「昔から、幽霊が出るとか、いろいろ噂はあったんだよね」

結奈が怯えた声で言った。

「邪気もこの辺りは特に出やすいから、そんな感じはしてたんだよな」

紫音も、同意していた。

「要と隼人は?」

真白は、要と隼人がいないことに気がついた。

「連絡はしたんだよね?」

湊に聞かれた真白は、頷いた。

「はい。昨日の夜、二人に連絡しました」