「あっごめんなさい!」

後から同い年くらいの少年二人も追いついてきた。

「だから走るなって言っただろ!」

「だって…」

「大丈夫だよ。まだ間に合うから」

「うん。あっ、すみません。怪我とかしませんでしたか?」

女の子は、隼人に向かって言った。

「大丈夫。気をつけてね」

「本当にすみませんでした」

女の子と少年二人は、隼人にお辞儀をして、歩いて行った。



春香は、陸上部の練習に来ていた。

ちょうど自分の番が終わり、休憩をしていた。

(真白と、湊さん?)

旧校舎の方に、二人が歩いているのが見えた。

「次!」

顧問の先生に声をかけられて、春香は立ち上がった。


(二人とも、何してたんだろ?)



真白は湊から話を聞いていたところだった。

「霧人に知恵の侍女たちが殺されたって話からだったよね?」

「はい」

「それについて詳しく話すね。その侍女三人は、新羅(しんら)陽瑛(ひえい)未影(みかげ)の兄弟だった」

「え?」

その事実に真白は驚きを隠世界なかった。

「知恵の死後、清華とその三人の侍はとても悲しんでいた。そもそも、知恵の亡くなった原因は、一緒にいた従者を庇ったからなんだ」

「従者を、庇った?」

「それが、護衛として一緒にあやかしの討伐に行っていた、新羅、陽瑛、未影のうちの誰かが、知恵に助けてもらっていたんだよ」

「名前は、わからないんですか?」

真白の問いかけに、湊は首を横に振った。

「そこまでは分からなかった。ただ、それが原因で、知恵に仕えていた侍女は殺されてしまった可能性が高い。ここまでがこの前話そうと思ってたこと」

湊は、バックから一冊のノートを取り出した。

「これは沙羅さんに借りたんだ。真白ちゃんも沙羅さんに話は聞かせてもらってたでしょ?」

真白も含めて、春香、慧、千輝の三人で話を聞いていた。

「ここに書かれているのは巫女の術具について。それと、真白ちゃんと隼人が図書室で見つけた本は神宮家が所有しているはずの本だったんだ」

「それがどうしてこの学校の図書室に?」

「もしかするとこの土地は、退魔師や術者たちと関係が深い場所なのかもしれない」

「つまり…」

「この土地を調べる必要がある」



その頃、京都では、

「琉晴、なんでいきなり真白ちゃんたちを返したりしたんだ」

渚が琉晴の部屋に来て尋ねた。

「百鬼夜行と、神儀りまであと少し。こっちもこっちでいろいろ準備があるんだ」

「準備?それはあらかた終わったと言っていたじゃないか」

「まぁ、そうなんだけど、それとは別に」

「当主に取り憑いているものと何か関係あるのか?」

「うん。だからこうして準備をしているんだ」