次の日、真白たちは帰る用意をしていた。

「本当に帰っても大丈夫なのかな?」

真白は、春香に言った。

「だって、もう帰っても大丈夫って言われたんだよ?帰るしかないよ」

昨日の夜に、突然琉晴が、明日の朝には帰ってもいいと言い出したのだ。

「まだ、湊さんに教えてもらってないこともあったのに…」

「湊さんに?どんなこと?」

「ううん。なんでもない」


真白たちは、部屋を出て、一つの部屋に集まった。

そこには湊もいた。

「みんな、予定が変わってばかりでごめんね。俺もこれから実家に帰ろうと思うんだ」

「そうなんですか?」

要が湊に聞いた。

「あっちでの用事があるんだ。八月の終わりまでは実家にいるつもりだから」

そして、真白たちは京都を後にした。



京都から帰ってきて数日が経った。

真白は、学校に用があったので、湊も一緒についてきた。

「懐かしいな。俺も数ヶ月前まで、ここにいたんだよね」

廊下を歩きながら、湊は校舎を見渡した。

「それで、今日はあの話の続きだよね?」

湊が真白を見て言った。

「はい。結局、聞けないまま戻ってきてしまったので」

湊と真白は、旧校舎までやってきた。

「今日は、他のみんなは用事があるんだよね?」

「そう言ってました」

「じゃあ、ここに来る人たちはいないね」

空き教室に入ると、二人は椅子に腰掛けた。

「この間は何もなかった?」

(あの男の人のこと、言った方がいいかな…)

真白の前に二度現れた、謎の男性のことを話してもいいのかと真白は迷っていた。

「あの…神宮家に行った時に、若い男の人が二回話しかけてきたんですけど、湊さんは知っていますか?」

「その人は、どんな格好だった?」

「和服で草履を履いた黒い髪の毛で、年齢は二十代後半くらいに見えました」

「神宮家には、それくらいの年の使用人もたくさんいるからね。着物を着ている人の方が多いし…この人だとハッキリ言える人はいないかもしれない」

「そうですか…」

真白にはそのほかにももう一つ、気になることがあった。

「あと、神宮家の当主ってどんな人なんですか?」

「神宮家の当主?俺は数回しか会ったことがないからあまり知らないけど、とても厳しいと周りの人たちは言っていたよ」

湊は続けて言った。

「でも数年前から体調を崩していて、前とは人が変わったようになったみたいだと、言っている人もいたな。俺もこの間一言話したけど、少し穏やかになっている気がしたんだ」

(じゃあ、なんであの人は、当主に気をつけろってなんて言ってきたんだろう?)