「必ずと、約束しろ」

鵺の威圧感に琉晴は一瞬戸惑った表情を見せたが、すぐ元の表情に戻った。

「約束しよう」



要は、拓海に稽古をつけられていた。

「次は、式神出してみろ」

「式神、ですか?」

「そうだ。当然いるだろ?」

なんでそんなことを知っているのか疑問に思ったが、言われた通りに式神を出した。

「要、何か用ですか?」

要が出したのは烏の姿をした式神だった。

「もっといるだろ。出せるだけ出してみろ」

「それが…まともに言うことを聞いてくれるのはこの式神だけで…」

それを聞いた拓海はひどく驚いた顔をした。

「嘘だろ?お前、あの彩葉の従者だったんだろ?」

「前世は、そうでした」

「確か白夜(びゃくや)とか言ったか。そいつはかなり腕の立つ陰陽師だったはずだ」

その言葉が要の胸をえぐった。

「今の俺に、実力がないのはわかっています。わからないんです。なぜ上手く式神を使役できないのか」

「そんなの簡単だ。それは、お前に自信がないからだ」

「自身が、ない?」

「お前、なんかトラウマでもあんじゃないのか」

トラウマ。

あるといえばある。

「そのせいで、力を上手く発揮できていないと俺は思うけどな」

それが式神を使役できていない理由だとしたら…

「他の術は使えるのに、式神だけが使役できていない。そんなのお前自身の心に問題があるようにしか思えない」

「それじゃあ、どうすればいいんですか?」

「そんなの自分で考えろ。もうすぐ日が暮れる。屋敷に戻るぞ」

それだけ言って、拓海は屋敷戻ってしまった。

「式神を上手く使えるようになるには、過去のトラウマと向き合わなきゃいけないってことか?」


夜になって、全員が神宮家の屋敷に戻ってきた。


「疲れた…」

紫音はそう言ってベットに横になった。

「あの人、口調は優しいのに、稽古に関しては容赦ないんだな…」

充に自身の持っている刀を見せたら、構えるところからダメ出しを喰らった。

「…そういえばあの人、誰かに似てるような気がするんだけどな…誰だったっけ?」

紫音は昔、充に似た人物と会ったような気がしていた。

「気のせいか」

紫音はベットから起き上がってベランダに出た。

「あ…」

庭に花蓮の姿を見つけた。

隣には、若菜がいた。

花蓮のことを指導する担当をしていた。

「あいつ、楽しそうだな」

花恋は楽しそうに笑っていた。

そんな花蓮の姿を見て、紫音も顔がほころんだ。