「なんで、この人たちがいるんですか?」

要は渚に尋ねた。

「私が呼んだんだ。君たちの稽古をつけてもらうために」

「稽古って、なんの稽古ですか?」

隼人が続けて聞いた。

「君たちの力のコントロールするための稽古だよ。まだ力を上手く発揮できていなかったり、コントロールできていないんじゃないか?」

「それは…そうですけど」

要が拓海を睨んだ。

「なんだお前、怖い顔して」

拓海が要を見た。

「要くんは、拓海におねがいするとしよう。いいか?」

「あぁ、構わない」

拓海は承諾したものの、要は不満そうだった。

「隼人くんは、夏樹(なつき)に稽古をつけてもらうといい」

隼人は、夏樹を見た。

背の高い、落ち着いた感じの少年だ。

「真白ちゃんと春香ちゃんは、由紀と(めぐみ)と一緒に屋敷に入ろう。晶は外で様子を見ていてくれるか?」

「わかった」

晶が頷いて言った。


真白たちは、屋敷に入った。

「待たせて悪かったな。沙羅」

屋敷の中で沙羅が待っていた。

「兄さんたち、まだまだかかりそうだったわよ。先にできることやっておいた方がいいと思って」

沙羅は手に一冊のノートを持っていた。

「ここに疑問に思っていることと、分かっていることを書いていきましょう」

沙羅の言葉に真白たちは首を傾げた。

「私が沙羅に頼んだんだ。今まで起こったことと、わからないままのことまとめて欲しいと」

丸いテーブルに円になるように座った。

「まず、術具について知りたいのよね。これは一ノ瀬家でまとめてくれた資料があるから、それを見ましょう」

沙羅が机に一冊のファイルを置いた。

中を開くと、古い時代の文章をコピーした紙が綴じられていた。

「術具は元々、巫女が神楽を舞うために使っていたもののようね。でも時代が変わるにつれて、数や形が変化していった」

最初にあったのは、三つだった。

それからどんどん、数が増えていったのだ。

「でも、桜咲家の祖先が大罪を犯したせいで、私たちは今苦労してるのよ」

真白はその言葉に反応した。

その言葉を言ったのは、由紀だった。

「由紀」

沙羅が由紀をなだめた。

春香は、なんのことを言われているのかわからないようだった。

「え?どういうことですか?」

春香が訊ねた。

「それはこの後に話そう」

渚が春香に言った。

「そうね。順を追って説明するわ」

沙羅が話そうとした時、渚のスマホが鳴った。

「悪い…琉晴から戻って来いとの連絡だ。悪いが、私は神宮家に戻る」

そう言って、渚は席を立った。

「戻るんなら、俺も一緒に行くよ。姉さん、渚を送ってくるから、何かあったら連絡して」

「うん。気をつけてね」

晶は沙羅に向かって言うと、二人は部屋を出て行った。