花蓮が太陽の眩しさに目を細めて言った。

鳥と龍が地面に降りてきた。

「やっぱりこの季節に飛ぶのはあんまりよくないかもねー」

「当たり前でしょ…熱中症になるとこだった…」

ピンピンして龍から降りてきた女性と、ぐったりとして鳥から降りてきた女性がいた。

「日和、若菜。どこに行ってたんだ」

充が二人を問い詰めた。

「天気がいいから散歩してこようと思ったんだけど…すっごい暑かった」

「なんか変な人たちだな…」

それを見ていた紫音たちはヒソヒソと話していた。

「そんなこと言っちゃダメだよ」

「でも結奈だって、そこで寝てた男の人のこと、変って言ってなかった?」

そう言った結奈に天音が言った、

「それは、まぁ…」

「やめなよ。聞こえたらどうするの」

花蓮が話を止めるように諭した。

「皆さん、僕とこの三人が術具の使い方と霊力のコントロールの仕方を皆さんに指導します」

「よ、よろしくおねがいします」

紫音たちは、戸惑いながら頭を下げた。


真白たちは、車で渚と晶の住んでいる屋敷まで移動していた。

「ごめんね。道が悪くて少し揺れるんだ。大丈夫?」

「大丈夫です。…うわっ」

要はそう言ってはいるものの、後部座席でバランスを崩していた。

「ここはもともと、人があまり立ち入らないようにわざと整備されていないんだ」

「どうしてですか?」

助席に乗っている渚に真白が訊ねた。

「あの屋敷は、元は帝に仕えていた従者の屋敷だ。帝の従者ならそれなりに身分も高くなる。加えて、妖や霊が多く棲みついている場所でもあった」

「つまりは、限られた人間しか入れない場所だったんだよ」

真白たちのさらに後ろにいた慧が言った。

「ところで、どうして慧と千輝くんまでついてきたんだ?」

渚が振り返って訊ねた。

「湊からの伝言で、柏木たちを見ていてほしいそうだ」

「そうは言っても、私の屋敷は特段危険なことは起きないと思うがな」

「休業になってた旅館はどうなったんですか?」

千輝が聞いた。

「あの旅館ならまた営業を再開できた。やはり桜咲家の本家が関係していたようだ」

桜咲家の本家とあの旅館はもともと一つの建物だった。

時が経つにつれて、今のような形になった。

「湊が、巫女の術具について話していたな。家に戻ったら、何冊か関係のありそう本を持っていこう」

「術具?」

真白は首を傾げた。

「私も最近知ったんだが、正しくは術具というそうだ」

「術師や退魔師の家によって、呼び方が異なっていることがあるんだよ」

晶がハンドルを右に切りながら言った。

「あと、時代の流れで、そのことについて書かれている本が破損していたり、ページが抜けていたりもするから、まだ解明されてないことも多いんだ。今、修復してもらってるんだよ」

「一ノ瀬家がそれを担っているはずだ」

渚が続けて言った。

「そろそろ着くよ」

渚と晶の暮らしている屋敷が見えてきた。

「向こうも間に合ったようだな」

四人組が屋敷の前で待っていた。