使用人のような人が前に出て話をしている。

「今回お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。今回皆様にお集まりいただいたのは、名家の次期当主の顔合わせと秋に行われる祭典に関しての役割分担をかねて、お集まりいただきました」

「ねぇ、役割分担を決めるのはわかったけど、なんで顔合わせなんてするのかな?」

春香が真白に耳打ちしてきた。

「確か、若いうちに関わりを持って、集会の時に戸惑わないようにするためとかなんとか言ってた気がするけど…」

慧と千輝から事前に説明を受けてはいたが、真白にもよくわからなかった。

「春香はその時いなかったもんね」

部活があって、旧校舎に春香だけいなかったのだ。

「それでは役割分担を発表します。百鬼夜行は、神宮家、一ノ瀬家、朱本家、三上家、桜咲家。神儀りは玄道家、二階堂家、虎田家、四ノ宮家、青龍寺家、桜咲家。以上になります」

「おい。話し合いで決めるんじゃなかったのか」

慧が渚に言った。

「そのはずだ。なぜ独断で決定しているんだ」

周りもざわざわし始めた。

どうやら、予定外のことのようだ。

「皆様、申し訳ございません。諸事情により急遽、こちらで決めさせていただきました。どうかご了承ください」

琉晴が前に出て話した。

(諸事情…)

湊はどこか引っかかった。


その日の夜、湊は琉晴のいる部屋に向かった。

「琉晴さん、あれはどういうことですか?」

湊は机に手をついた。

「事情が変わった。他の退魔師や術者には帰ってもらった。ここからは名家だけでの集まりにする」

「その事情ってなんなんですか?」

「それは…」

「しばらくぶりだね。湊くん」

やってきたのは神宮家の当主だった。

「ご無沙汰しております」

湊はそう言って頭を下げた。

「お体の具合が悪いと伺っておりましたが…」

「今日は、調子がいいんだ。心配をかけてすまなかった」

「いえ、お大事になさってください」

「湊、続きはあとで話すから、先に戻っていろ」

「え?」

「すぐに行く、談話室で待っていてくれる?」

「…わかりました」

湊は渋々、部屋を出て行った。

琉晴は、当主に向き直った。

「なんのつもりだ」

「私は当主として、役目を果たしているだけだ。何か問題あるか?」

(こいつ…!)

「お前が父の体を借りて何をしたいのかは知らないが、勝手な行動は控えてもらう」

当主は嘲笑うかのように言った。

「次期神宮家の当主であろうものがその程度か。時間は残り少ないぞ。それまでこの体は持つか見ものだな」


部屋の外で、渚が話を聞いていた、

(当主のあとを気になってつけてきてみれば…やはりあれは当主ではなかったのか)

渚は足音を立てないようにそっとドアから離れた。