真白たちは部屋を出て、使用人の後をついて行った。

「本当に広いお屋敷だね」

春香が真白に話しかけた。

「うん。すごく綺麗だし」

真白の住んでいる屋敷の数倍は広いだろう。

「この屋敷は明治に建てられたんだ」

後ろを歩いていた渚が教えてくれた。

「明治?そんなに前からあるんですか?」

「何回かリフォームをしたりはしているが、貴重な物などは残しているらしい」

「そうなんですね」

「真白ちゃんの首にかけてあるそれは眷属を呼び出せるんだったな」

渚が真白の首飾りを見て言った。

「はい」

「この屋敷にいる間は、肌身離さず持っていろ」

「わ、わかりました」

渚があまりにも真剣な声で言ったので、真白は少し驚いた。

(一人にならないようにしろとか、首飾りを肌身離さず持っていろとか、ここって、そんなに危険なところなの?)

だが、この間のように、何が起こるかわからない。

真白は、首飾りを強く握った。


「それと、この集まりは、秋に行われる百鬼夜行と神儀りの役割分担を決めるらしい」

やがて大きなドアの前にやってきた。

「こちらになります」

ドアを開けられて中に入ると、大勢の人がいた。

「この人たち、全員退魔師と術師の人たちなの?」

真白はその人数に圧倒された。

「あれ、湊さんじゃない?」

春香が湊の姿を見つけた。

湊は、琉晴と充と話をしていた。

「あの琉晴さんの隣にいる人って誰ですか?」

真白は渚に尋ねた。

「あの人は玄道充。玄道家の次期当主だ。今回、君たちの護衛を頼んでいる。ここには絡まれると厄介な人物もいるからな」

「厄介?」

真白はどこからか視線を感じた。

(誰かに見られてる…?)

周りを見渡したが、誰もいない。

「みんな、ひさしぶり」

湊が真白たちのところにやってきた。

「初めまして。あなたたちとはお会いするのは初めてですね。玄道充と申します。今回の集まりと、秋の祭りの際には、護衛を務めさせていただきます」

「今回、充さんの他に、三人がみんなの護衛についてくれるから」

それに紫音が質問した。

「なんで俺たちに護衛がいるんですか?」

「紫音たちは前世の記憶を持っているからね。珍しがる人たちやあやかしが多いんだ。それに巫女の術具もまだ使いこなせていないでしょ?ちょうどいいから力のコントロールの仕方を教えてもらったらどうかな?」

「でも他の三人はどこにいるんですか?」

隼人が尋ねると、充は困った顔になった。

「僕も探してるんですけど、みんなどこにいるかわからないんです。これだけ人がいますから。そのうち会えると思うので、その時に紹介します」