桜も散り、五月になった。

真白たちの学校では、修学旅行について説明が行われていた。

「修学旅行は、京都に向かいます。まだ先ではありますが、現時点で決まっていることを話しておこうと思います。二年生は人数が多いので、引率の先生も多くなります」

真白は、手元のプリントを見た。

慧と千輝の名前もある。

二人は同じ学年で別々のクラスを受け持っている。

(夏に、京都に行った方がいいのかな…)

送別会の時に会った二人組に夏に退魔師と術師の集まりがあることを聞いていた。

湊に連絡が取れれば、行けるかもしれないと真白は考えていた。

(私、湊さんの連絡先知らないだよなぁ…要たちに聞けば、誰かは知ってるかもしれない)


「湊さんの連絡先?」

真白は要に湊の連絡先を知らないか、聞いてみた。

「一応わかるけど、どうして?」

「聞きたいことがあって」

要はスマホを取り出して、湊の連絡先を表示した。

「あ、でも電話よりメッセージの方がいいかな。大学の授業とかもあるかもしれないし」

今は昼休み。

高校と大学では、授業時間が違うため、メッセージの方がいいだろう。

真白は、湊のメッセージアプリのIDと電話番号を教えてもらった。

「ありがとう。とりあえず、夕方になったら連絡してみる」



夕方になった頃、湊は家に帰って調べ物をしていた。

「あの本と似た物をどこかで読んだ気がする。…どこだったかな」

湊は記憶を辿った。

「あれは、確か…姉さんに会いに行ったときだった気がするんだけど…」

三年前に、湊が久しぶりに姉の渚に会いに行った。

その時に神宮家の書庫を見せてもらったのだ。

「そうだ、その時に似たような本を見たんだ」

湊はスマホを取り出して、慧から送られてきた写真を見た。

「でも、中を見ないとわからないな。もし処分する本なら、そのまま持ってきてもらえると助かるんだけど…」

「何を見ているんだ?」

鵺が現れた。

「この本、なんの本か分かるか?」

鵺に写真を見せた。

「これは古い歴史書だ。表紙のところにそう書かれている」

湊は目を凝らした。

よく見ると何かタイトルのようなものが書かれている。

「俺には掠れてて読めないな…」

「それは人間が解読するのは難しい。おそらくあやかしが記したものだろう。霊力のない人間にはその文字も目に映ることはない」

「あやかしでも、字が書けるのか?」

「人間に化けることが可能なあやかしであれば文字を習得することも可能だ」

(もしかして、古い時代からいたあやかしが記した本も探せばあるのか?そもそもあの学校は、元々は何があった場所なんだ?)


湊が考えていた時、スマホが鳴った。

画面に表示されているのは知らない番号だ。

「誰だろう?もしもし」

恐る恐る電話に出ると、真白の声が聞こえてきた。

『湊さんですか?すみません。要から番号を聞いて連絡しました』

「真白ちゃん?どうしたの?」