ぐずぐずと泣き続けるイツキをバスタオルで拭いてやって、服を着せ、リビングまで手を引いて歩き、ソファに座らせる。ドライヤーの風を浴びせても、イツキはぼんやりしてされるがままだ。
電子レンジで牛乳をあたため、表面にできた薄い膜をとる。カップを渡すと、イツキは両手で抱えるようにして一口こくりと飲んだ。
「落ち着いた?」
一旦ひっこんでいた涙がまたじわりと瞳に滲む。
「嘘つき。」
「嘘?」
「チサちゃんと、付き合ってないって言ったのに。」
「嘘じゃねぇよ。」
「だって……っ、傘……っ、一緒に入ってた……っ」
「一緒にって、イツキやっぱり学校の方まで来てくれてたのか?ごめん俺、」
「めちゃくちゃ楽しそうだった……2人で、……っ、」
「ちがうよ、」
「手、繋いでた。」
「は??繋いでねぇよ、あ、あれかな、車きて」
「なんもないって言ったじゃん。」
「なんもねぇよ。ねぇ、イツキ、聞いて、」
「ばか。俺の方が、ずっと好きだったのに。手、とか触らせてんじゃねぇよ。ぜんぶ俺のなのに。ばか、はげ……」
ぼろぼろと涙を零すイツキの手からカップを受け取る。
熱を持った手をそのままそっと引き寄せ、抱きしめた。
「そんなの全部俺の台詞だ。ほいほいいろんな子と付き合いやがって。」
「……っ、先に彼女作ったのはコウじゃん。」
「それは……ごめん。」
「ばか。ばか。俺は、俺はずっと好きだもん。コウだけ、ずっと好きだった。」
うぅ、、っとイツキはまた苦しそうに涙を流す。
「俺が悪い。イツキとは一生一緒にいるんだろうって思ってて……お前に彼女ができて初めて、それが当たり前じゃないって気づいたんだ。お前の言う通りばかだから、俺。これがそういう好きって気づくのが遅かった。」
「……好き?」
「うん。」
「……コウ、俺のこと好きなの?」
「うん。」
「本当?」
「うん。好き。すげー好き。」
ぅわぁぁぁん、と、声を上げて泣くイツキの顔は、小さな子供の頃と何も変わらなくて。
「ぷっ、きったねぇ顔。イツキそんな泣き虫だったっけ。」
いつだって、先に泣くのは俺だったのに。
「コウのせいじゃん。バカ」
「そうだな。俺のせい。ぜんぶ俺のせい。だから涙も、鼻水も、ぜーんぶ俺のな。」
「……変態。」
「変態でいい。ばかでいい。ずっと好き。一生好き。」
「俺も好き。大好き。」
イツキがあんまり泣くから俺まで泣きたくなって、イツキをしっかり胸に抱きしめながらこっそり泣いた。
外では相変わらず雨が激しく降り続けていて、時々何かが風に飛ばされて転がっていく様な音が聞こえる。
ふ、とリビングの照明が消えた。
「……停電?」
「うん……、、、あ、灯いた。」
再び明るくなった部屋でお互いの顔を改めて見合う。
「ひっでぇ顔。てかコウも泣いたな。」
「バレたか。」
涙で濡れた頬を手で拭ってやる。
「俺腹減ったな。」
「うん。今何時だ?ぅわ、もうこんな時間か。腹も減るわ。」
「なんか作る?」
「いや、イツキも今日は疲れてるだろ。毎日作ってもらうのもなんか悪りぃし。」
「それは全然いいけど、材料もそんな無いしなー。」
涙を拭っていた俺の手をとり、にぎにぎと弄びながらイツキが言う。
「こういうときは魔法の箱だな。」
「それだ。」
魔法の箱というのは、食欲旺盛すぎて四六時中お腹すいたと騒ぐ俺たちのために昔母親達が設置した箱で、カップラーメン等すぐに食べられるものが常備されている箱のことだ。
減ってくるとどちらかの親が補充していたので、食べても食べても箱の底が見えることはなかった。それが不思議で小学生の頃の俺たちは魔法の箱と呼んでいた。ちなみにこの箱はイツキの家にもある。
「えっコウ特盛2つも食うの?」
「腹減ったんだって。」
「太るぞ。」
「つーかイツキのはちっちゃくね?足りる?」
「いいじゃん、これはスープが旨いの♡」
「へー。今度俺もそれにしよっかな。あ、俺やっとくからイツキテレビでも見てて。」
「……いいよ。一緒にやる。」
「でも最近やってもらってばっかだったから、たまにはゆっくりしてろよ。つってもお湯入れるだけだけど。」
「コウってほんっと鈍いよなぁ……。」
「へ?」
「近くにいたいんだよ。察せよ、ばか。」
思わぬ発言に隣を見ると、耳まで真っ赤にした横顔があった。
「……。」
「なんか言えよ。恥ずいだろ。」
「……かわいすぎかよ。」
「ははっ。なんだそれ。」
やばいな、これは。
最高に幸せ、の瞬間が毎分毎秒更新されていく。
電子レンジで牛乳をあたため、表面にできた薄い膜をとる。カップを渡すと、イツキは両手で抱えるようにして一口こくりと飲んだ。
「落ち着いた?」
一旦ひっこんでいた涙がまたじわりと瞳に滲む。
「嘘つき。」
「嘘?」
「チサちゃんと、付き合ってないって言ったのに。」
「嘘じゃねぇよ。」
「だって……っ、傘……っ、一緒に入ってた……っ」
「一緒にって、イツキやっぱり学校の方まで来てくれてたのか?ごめん俺、」
「めちゃくちゃ楽しそうだった……2人で、……っ、」
「ちがうよ、」
「手、繋いでた。」
「は??繋いでねぇよ、あ、あれかな、車きて」
「なんもないって言ったじゃん。」
「なんもねぇよ。ねぇ、イツキ、聞いて、」
「ばか。俺の方が、ずっと好きだったのに。手、とか触らせてんじゃねぇよ。ぜんぶ俺のなのに。ばか、はげ……」
ぼろぼろと涙を零すイツキの手からカップを受け取る。
熱を持った手をそのままそっと引き寄せ、抱きしめた。
「そんなの全部俺の台詞だ。ほいほいいろんな子と付き合いやがって。」
「……っ、先に彼女作ったのはコウじゃん。」
「それは……ごめん。」
「ばか。ばか。俺は、俺はずっと好きだもん。コウだけ、ずっと好きだった。」
うぅ、、っとイツキはまた苦しそうに涙を流す。
「俺が悪い。イツキとは一生一緒にいるんだろうって思ってて……お前に彼女ができて初めて、それが当たり前じゃないって気づいたんだ。お前の言う通りばかだから、俺。これがそういう好きって気づくのが遅かった。」
「……好き?」
「うん。」
「……コウ、俺のこと好きなの?」
「うん。」
「本当?」
「うん。好き。すげー好き。」
ぅわぁぁぁん、と、声を上げて泣くイツキの顔は、小さな子供の頃と何も変わらなくて。
「ぷっ、きったねぇ顔。イツキそんな泣き虫だったっけ。」
いつだって、先に泣くのは俺だったのに。
「コウのせいじゃん。バカ」
「そうだな。俺のせい。ぜんぶ俺のせい。だから涙も、鼻水も、ぜーんぶ俺のな。」
「……変態。」
「変態でいい。ばかでいい。ずっと好き。一生好き。」
「俺も好き。大好き。」
イツキがあんまり泣くから俺まで泣きたくなって、イツキをしっかり胸に抱きしめながらこっそり泣いた。
外では相変わらず雨が激しく降り続けていて、時々何かが風に飛ばされて転がっていく様な音が聞こえる。
ふ、とリビングの照明が消えた。
「……停電?」
「うん……、、、あ、灯いた。」
再び明るくなった部屋でお互いの顔を改めて見合う。
「ひっでぇ顔。てかコウも泣いたな。」
「バレたか。」
涙で濡れた頬を手で拭ってやる。
「俺腹減ったな。」
「うん。今何時だ?ぅわ、もうこんな時間か。腹も減るわ。」
「なんか作る?」
「いや、イツキも今日は疲れてるだろ。毎日作ってもらうのもなんか悪りぃし。」
「それは全然いいけど、材料もそんな無いしなー。」
涙を拭っていた俺の手をとり、にぎにぎと弄びながらイツキが言う。
「こういうときは魔法の箱だな。」
「それだ。」
魔法の箱というのは、食欲旺盛すぎて四六時中お腹すいたと騒ぐ俺たちのために昔母親達が設置した箱で、カップラーメン等すぐに食べられるものが常備されている箱のことだ。
減ってくるとどちらかの親が補充していたので、食べても食べても箱の底が見えることはなかった。それが不思議で小学生の頃の俺たちは魔法の箱と呼んでいた。ちなみにこの箱はイツキの家にもある。
「えっコウ特盛2つも食うの?」
「腹減ったんだって。」
「太るぞ。」
「つーかイツキのはちっちゃくね?足りる?」
「いいじゃん、これはスープが旨いの♡」
「へー。今度俺もそれにしよっかな。あ、俺やっとくからイツキテレビでも見てて。」
「……いいよ。一緒にやる。」
「でも最近やってもらってばっかだったから、たまにはゆっくりしてろよ。つってもお湯入れるだけだけど。」
「コウってほんっと鈍いよなぁ……。」
「へ?」
「近くにいたいんだよ。察せよ、ばか。」
思わぬ発言に隣を見ると、耳まで真っ赤にした横顔があった。
「……。」
「なんか言えよ。恥ずいだろ。」
「……かわいすぎかよ。」
「ははっ。なんだそれ。」
やばいな、これは。
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