冷たい雨が街を包み込む夕暮れ、私は彼と最後の別れを告げた。ずっと一緒に過ごしてきたけれど、私たちの未来は違う道を選ぶべきだと感じていた。

「もう、これで終わりだね」
彼の声がかすかに震えた。その言葉が胸に刺さったけれど、私は微笑むしかなかった。

「うん、さよなら」
そう言って背を向け、振り返らずに歩き出した。雨が頬を伝い、涙を隠してくれる。だけど、その涙は別れの悲しみだけではなかった。

数ヶ月が過ぎた。新しい生活に慣れつつも、心の奥底であの別れの日が何度もよみがえっていた。彼の優しい笑顔、隣で感じた温もり、すべてが今も鮮明に思い出される。それでも、私たちが選んだ道は互いの幸せのためだと自分に言い聞かせていた。

そんなある日、友人の誘いでカフェに立ち寄ったとき、偶然にも彼と再会した。彼の顔を見た瞬間、私の心は一瞬止まったようだった。

「久しぶりだね」
彼が微笑みながら声をかけてきた。

「本当に久しぶりね」
私はどう反応すべきか分からず、ぎこちなく答えた。

二人は互いの変わった生活や最近のことを話したが、会話の中で不思議な懐かしさと温かさが広がっていくのを感じた。別れたはずなのに、再び彼と向き合ったときに感じたこの感情は一体何だろう。

数日後、彼から連絡が来た。以前のように、何でもない話をするだけでも楽しかった。二人の間には、過去の傷を癒す時間が流れていた。

やがて、彼は言った。「もう一度、君と向き合いたいんだ。別れたあの日から、ずっと君のことを忘れられなかった」

私の心は大きく揺れた。でも、彼の真っ直ぐな瞳を見つめると、自分もまた、同じ思いを抱えていたことに気づいた。

「私も、きっと同じだった」

別れから始まった私たちの物語は、再び交差し、新たな道を歩み出そうとしていた。それは、一度失ったからこそ知った大切さ、そして新たに見つけた愛の形だった。

二人の恋は、もう一度ゆっくりと芽生え始めた。雨の日も晴れの日も、過去の痛みを乗り越え、今度こそ二人で手を取り合い、前へと進むために。