『桜っっ!!!』
「御影 黒稜を本気にさせるには、これしか方法がないんでしょ?俺も本当はこんなことしたくないんだけどさぁ…、ごめんね、桜ちゃん」
「うぅ……っ」

 申し訳なさそうに言う李央だが、桜の生死など、全く気にしていないようだった。

『貴様…』

 黒稜のあやかしの力が大きくなって、狐火が彼の身体を包み込む。あやかしの力が、黒稜の感情に呼応するかのように強くなっていく。

『桜を解放しろ』
「俺に勝ったらな」

 桜は薄れ行く意識の中で、必死に黒稜に手を伸ばした。

(黒稜様…だめです…!あやかしの力にのまれては……)

 今のところは完璧に制御出来ていると言っていた、黒稜のあやかしの力。しかしそれが少しずつ不安定になっているのが、桜には分かった。

(このままではだめ…どうしたら…)


『黒稜を助けて』


 どこかから女性のような声がしたかと思うと、キーンと高い音がして、桜は強く目を瞑った。