そうして二年経った今も、桜は使用人と同じように扱われていた。
道元、文江からはあれをやれこれをやっておけと言われ、弥生からは姉とは思っていないような、召使い同然にひどい扱いを受けていた。
弥生の部屋の掃除から始まり、弥生の身の回りの世話、仕事関係の書類の整理、座学の試験は桜が代わりに受けていたし、何か間違えたり、出来ていなかったりするだけで、ものすごい罵声を浴びせかけられた。
弥生にとって桜は、ちょうどいいストレスの捌け口になっていた。
何を言われてもなんとかやってこれたのは、その汚い言葉達が桜の耳に入ってこなかったからだ。
二年経った今も、桜の聴力は戻らないままだった。
(…あの時私がしっかりとあやかしを祓っていたら。こんな呪いをかけられることはなかったのかな……)
桜の聴力や陰陽師としての力が失われた原因が、あやかしの呪いだったのかは定かではない。
しかし桜は自分の甘さを何度も何度も後悔していた。
(どうして私の人生は、こんな風になってしまったんだろう…)
文江がまた何か桜に向かって怒鳴っている。
言われていることは大体分かるけれど、桜の頭の中は「どうして」とそればかりが巡り続けていた。