鞄で凌いだはずが結構濡れてしまっていてため息をついた。ローファーは水浸しだし。これぜったい躓いたせい。汗の代わりに顔にはりついた雨雫を指先で払う。蝉で姦しかった辺りも雨の激しい音で満ちてばかり。
上空で雷でも発生してるのかすこしゴロゴロいってるし、ああもうなんて休日だ。なんて。なーんて。思い出していたい。
うるさい。
ずっと鳴り止まない雨の音も雫も、若干差で光ったり鳴ったりするのも、あまりすきじゃないけど。すきじゃないけど。
鞄で震え始めたスマホを取り出して画面を見る。ちょうど良かった、と思いつつタップした。
「もしもーし、紗莉ちゃん」
『あんた今どこいんの。さっき学校出たってメッセージ見たけど』
「あ、うん、今ね雨宿りしてる。急に降ってきたから」
『そ。よかったー、みやこ雨降ってることに気づいてないんじゃないかって心配で心配で、』
「流石に気づくからね? 心配ありがとね」
『帰れなくなったらうち来なよ。泊まってっていいから』
「えー優しい〜。電車止まったらお願いするかも」
『んじゃまた連絡して』
持つべきものは何とやら、ってやつを身に染みて実感する。すぐさま切れた通話に画面をスワイプ。喧しいほど雨はやまないからそれをぼうっと聞きひしがれるなんて、って。
こんなこと遭ったのたしか前にも。
前にも。