どこかで鳴った風鈴の音を言い訳にするように目を逸らした。こんなに通りが閑散としているのに、佇むように開かれているお店も水槽泳ぐ魚のうろこも、知らずにいた。


近道だって知るまで知らなかったからまだ知らないって感じなのかもね。


あつくなってくる頬が、汗が流れるこめかみがちょっと温い風に晒される。あ、なんか、夏。暑。蝉。ふうっと一息吐き出した。


自転車に乗った少年が私を追い越して泳ぐように走っていく。地面に長引いていた筈の影が薄く、違う、周りの暗さにのまれていくのがスローモーションに。


見えた、なんて言うのは難しい数式のおかげで頭いっちゃってるだけだ。


もくもくもくもく、膨らんでいた、あの白だって。急に急に白で。急に曇ってしまった夏の暑さが、妙な温度に変化する。ああどうしようかな、傘なんて持ってないのに。


とか思うから雨がしとしとと降り出しても、



「あー、もう!」



急げない。


ゆっくり降り始めていた雨ならまだ良い。やっと慌て始めた私を焦らせたいのか激しさを増す雫に、踵を返して元来た道を引き返す。


あの、開いているだけみたいな駄菓子屋。向かいの魚屋。の奥の方。シャッターが閉まっただけの店の前、頭の上にかざしていた鞄を犠牲にしたくなくて。雨避けの下に駆け込んだ。


流石に開いてる見せてに入るのは、なんか、恥ずかしい。とか一人前の羞恥が突破らえない。いきなり雨が降るなんて予想できてたら学校にいたのに。早く帰りたいなんて思ったせいなら天罰っぽい。