兎にも角にも午前は終わったしお腹は空いたし、担任いないし良いよね。あんた知んないよー、って脅してくる紗莉は今日の午後は私の家に来てくれるつもりだったらしい。
部屋散らかってるけどいいのと訊くと、私の部屋がまともに片付いてるときなんてない、って言われてしまうのだから信用問題を提示したい。
「天辻午後1時から補習再開だ。そろそろ真面目に頑張ろうな」
朝イチのコンビニで購入した塩おにぎりを頬張っていると、担任がめちゃくちゃ笑顔で教室に入ってきた。一緒に駄弁っていた紗莉は察した顔で私を見るから焦ってしまう。
「い、や、だ、な〜。私だって真面目にやってんのになあ」
「そうねー、私が言うまではぼーっとしてたよね」
「ちょっ、紗莉ちゃーん。それは内緒って言ったのに」
サラリと自然に私を売るものだから笑顔が引き攣った。え、ひど。別に何でもいいけどさすがにこれは怒っちゃうよーオラオラ。冗談。
目が合った彼女はなぜかウインクを飛ばしてくる。だから投げキスで応えてあげたっていうのに。
「随分余裕そうだな、天辻。これなら午後の補習は満点を取ってくれるだろうなあ」
水差されてしまうどころが嫌味が降ってきた。仕方なしに苦笑いをすると、見上げた先で鬼がにこやかに笑んでいる。
ああ憂鬱。どうせ予定なんてないけれど。